2008/12/30

いろいろありがとう

 仙台行ってきました。今年一年ふりかえっても、火星の庭さまさま。夏以来、仙台という町、そこで知りあった人たちから、大きな刺激を受けました。人生の転機になったとおもっています。

 二十七日(土)は、火星の庭の前野さん、浅生ハルミンさんとyumboとテニスコーツのライブに行く。倉庫みたいなライブハウスで、最初は足が冷えて冷えて、どうなるかとおもったけど、あっという間に、演奏がはじまったら、温度がどんどん上がって、ライブの醍醐味を満喫。yumboの演奏中、ステージの前でテニスコーツが卓球をしているという、もうなんといっていいのかわからない、見たことのないライブ、聴いたことのない音にあふれていた、異空間でした。

 そのあと、なんとか商会という知る人ぞ知る飲み屋に連れていってもらい、BOOK! BOOK! SENDAI!のメンバーと合流。古書現世の向井さんが牛タンシチューのデカ皿をたいらげる。牛タンのステーキのデカさにおどろく。楽しい会合だったけど、めちゃくちゃ酔っぱらって、おぼえていない。

 その日の夜は、前野家に泊めてもらい、爆睡し、起きたら、誰もいなかった。そうだ、前野さんの娘さん(五歳)に布団をひいてもらいました。すみません。
 昼すぎ、火星の庭に行ったら、晩鮭亭さん、退屈くんと合流。そのあと、マゼランに行って、東北大学前の古書街、新しくできた本にゃら堂にも寄って、STOCKのハルミンさん&海月さんのトークショー。向井さんの司会が絶妙だった。この対談、貴重ですよ。冊子かなんかの形にできないかあ。

 豪勢なトンカツ屋で打ち上げ。ウニ、あんきも、牛タン、クジラの刺身……どれもこれも最高品質。さらに白木屋で飲み続け、またまた前野家のお世話に。
 翌日、岡崎武志さん、晩鮭亭さんとマゼランへ。そのあと、岡崎さんが電車で帰り、「S」という古本屋(探しにくいかもしれないが、一見の価値あり)に連れていってもらい、店にはいった途端、焼酎(ストレート)二杯。赤塚不二夫の『我輩は菊千代である』(二見書房、一九八二年刊)など、ずっとほしかった本をいろいろ買わせていただく。
 晩鮭亭さんと「仙台は文化密度が高い」という話になる。

 火星の庭でもつりたくにこ『六の宮姫子の悲劇』(青林堂、一九七九年刊)をはじめ、大収穫でした。つりたくにこは、福島在住の漫画家のすずき寿ひささんに教えてもらった漫画家で、今年の夏から探していた。
 そうそう、火星の庭の「文壇高円寺古書部」の棚のいれかえをしてきました。自画自賛ですが、いい棚になっているとおもいます。来年もよろしくおねがいします。

 今、酔っぱらってますが、東京に帰って古本酒場コクテイルの年内最終日に顔を出してきた。前野健太さん(来年発売の新譜は素晴らしいですよ!)のライブだった。なぜかわたしを「先輩」と呼ぶ、古書桃李さんの四十五歳の誕生日だった。
 コクテイルに行く前、扉野良人さんから電話がある。先の話だけど、たぶん、すごくおもしろそうな雑誌(?)が出ます。詳しい話はまた来年。

 明日というか、今日、三重に帰ります。寝ます。よいお年を。

2008/12/25

たぶん、いま必要なもの

 すこし前、なにかの拍子に『蟹工船』の話になって、その流れで、ある人が生活苦の若者について、金がないのに酒を飲んだりタバコを吸ったり缶コーヒーを飲んだりするのは理解できないといった。
 そうかなあ。金がないときは先のことなんか考えられない。先のことが考えられないときはどうしても目先の欲求を充たしたくなる。とにかく、不安定な生活の中では、今の喉のかわきや飢えや疲れや不安をとりのぞくことが何よりも優先事項になる。

 ただ、そうした境遇からどうすれば抜け出せばいいのかというのはむずかしい話だ。

 仕事を干されて、ぐだぐだしていたころ、生き方をあらためろとかちゃんとしろとかいわれるより、とりあえず、これやってみるかとなんてことのない雑用を頼まれることのほうがありがたかった。
 ハローワークで失業中の若者に説教した漫画好きの総理が顰蹙をかったのも、そういうことなのだろう。

 赤塚不二夫がマンガ家をやめようとしたとき、寺田ヒロオが黙って半年分くらいの生活費を貸したという話がある。そうあることではないから美談になっているわけだ。
 松本零士の『男おいどん』に出てくる下宿館のおばさんは、おいどんに(ときどき)メシを食わせ、「あんたはいつか大モノになるよ」と励まし続けた。
 説教あるいは親身な忠告ですら、時と場合によっては受けつけられないときがある。腹が減っているときには、一杯の粥に勝る言葉はない。
 風邪で寝込んでいるとき、自己管理が甘いという説教されても、今はちょっと休ませてくれという気持になる。

 また『まんが道』と『男おいどん』を読み返そうとおもう。

2008/12/19

ギンガ・ギンガ

 秋くらいに刊行されて、ちょっと気になっていたコリン・レンフルー著『先史時代と心の進化』(小林朋則訳、溝口孝司監訳、ランダムハウス講談社)を読む。

 宇宙と古代の本は、年に何冊か、現実逃避もかねて読む。とくに先史時代は、おもしろいんですよ。理解はおぼつかないんだけど、研究自体が、はじまって年月が浅いから、どんどん新しい謎が解き明かされたり、浮上したりしている。

 文字ができる前の人類のことは、判明していないことがたくさんある。

 ヨーロッパでは、世界は紀元前四〇〇四年に創造されたという説が、つい二百年くらいまで信じられていて、先史時代という言葉すらなかった。

 今、われわれは、日々、これまでまったくわからなかったようなことが、すこしずつわかるようになるという状況に立ちあっている。それを知るためだけでも、生きてて損はないですよ。何の役に立つかは知らないけど。

 話はかわるけど、十二月十九日、年末恒例ライブ、高円寺ショーボートの「ギンガ・ギンガ」に行った。

 ペリカンオーバードライブ、オグラ、しゅう&トレモロウズ、そしてオープニングアクトはサリー。

 三組とも好きなバンド、ミュージシャンで、めちゃくちゃよかった。満員。
 ペリカンの新曲、パブロックを極めたような曲。疾走感と酩酊感が交互におしよせてくる。
 オグラさんは、なぜか金髪。風邪気味で、声がかれていたが、熱唱、というか、喉に負担のかかりそうな曲ばかり歌う。飛ばしっぱなし。
 途中からバンド編成になり、ペリカンのマサルさんがベース、元800ランプの原めぐみさんがキーボード、さらに一峰アネモネさんが、ダンサーとして登場した。
 しゅう&トレモロウズは、一年ぶりに見たのだけど、形容しがたい宇宙人ロックに酒がまわり、からだが動きだす。

 たのしい時間だった。現実じゃないみたい。
 ふだん、ふつうに飲んでいて、ふつうに酔っぱらっているけど、ライブを見ると、みんな、すごいなあと。
 いい余韻だ。

 さて、これから仕事。徹夜、というか、徹夜朝昼になりそう。
 そのまえに、ちょっと仮眠……。

2008/12/15

宇宙の柳

 風邪がぬける。三十代後半になって、風邪をひくと完治するまでに三、四日かかる。
 最高気温が十度以下になると、からだが鈍くなる。電車がきたので、駅の階段をかけのぼろうとしたら、足がつりそうになった。あきらかに運動不足だ。

 なんとか総武線の各駅停車にのり、新宿でのりかえ。渋谷行だから同じホームでいいのに、隣のホームに行ってしまう。あわてて戻る。渋谷から銀座線。外苑前。青山の「月見ル君想フ」というライブハウスに行く。
 カーネーションのライブ。先日の飲み会が縁で、招待してもらったのだ。岡崎武志さんも来る。
 開演前、ブックオフの話をしたりしていたわれわれは、ちょっと場違いなかんじがなきにもあらずであった。

 カーネーションのライブは、骨太だった。古きよきロックを継承しつつ、「我が道を行く」というかんじもある。
 すこしまえに、このブログで「精神の緊張度」という言葉について、いろいろ書いたけど、直枝政広さんもまたそういうものを追求しているようにおもえた。直枝さんの著書『宇宙の柳、たましいの下着』(boid)にあった言葉だと「からまわってなんぼ」とか「不器用さを隠さない」とか「思惑を超えるための無意識は自分の知らない地平にこそ生まれおち、活きる」とか、そういうことをライブの中でも、あえてやろうとしている気がする。

《おれは上品に音をマスキングしちゃう音楽は好きじゃなくてね、おそらくダメな部分がたくさん読み取れるような音楽が好きなんだ。めちゃくちゃダメダメだしね、おれも。(中略)がんばろう、という気にさせてくれるのも、そういう人間臭いダメな人やその音楽なんだよ》(同書)

……こんなところを引用してしまうと、カーネーションがダメダメなのかと錯覚してしまう人がいるかもしれないが、もちろんさにあらずで、直枝さんは洗練や円熟とはちがう欲求があるのだとおもう。自分の限界をこえたいとか、行けるとこまで行きたいとか、そういう気持が持続しているのだとおもう。しかも二十五年も。

 ほんとうにくらくらした。がんばろう、という気になった。

2008/12/13

古楽房オープン

 ここ数日、風邪だった。熱はないが、くしゃみ鼻水がとまらない。
 年末進行、これから正念場。なんとかのりこえたい。そうそう、今月から『本の雑誌』の連載(「飲んだり読んだり」)はじまりました。同じコラムページで畠中理恵子さん、高倉美恵さんの連載もはじまり、2008年度わたしのベスト3では、扉野良人さんが執筆しています。

 マスクをして西部古書会館に行くと、高円寺のあづま通りのコクテイルのすぐ先右手に「古楽房(コラボ)」という古本屋がオープンするというチラシをもらった。
 十二月十三日(土)プレオープンで十二月二十八日(日)まで店頭でワン・コイン市を開催中。本格オープンは来年一月からだそうだ。
 店長さん(実はパラディさんの店)いわく「百円均一に力をいれたい」「一月ごとに店内の棚を全部いれかえていきたい」とのこと。

『ぱふ』のとり・みき特集号、まんが家訪問記特集などを買う。

 前野健太さんの新しいアルバム(ハヤシライスレコード)のサンプル盤が届いた。ライブで聞いて、いい曲だなあとおもっていた「鴨川」も収録されていた。『ロマンスカー』のときよりも、音がやわらかく、ふっくらしている気がする。デジタルなのにアナログっぽい。とにかくいい。もうすこし聞き込んでから、また感想を書きたいとおもう。

2008/12/10

年末進行中

 先週金曜日、東京ローカル・ホンクのライブを見るために、ぷらっとこだまで京都に行ってきた。一泊二日。
 ホンクは丸太町の陰陽(ネガポジ)というライブハウスに出演。
 このあいだ、渋谷のBYGで見たばかりなのに、わざわざ京都まで追っかけてしまったのは、ホンクのメンバーが扉野良人さんの家に泊ると聞いて、だったらいっしょに飲みたいとおもったのである。四十代にはいってから、東京ローカル・ホンクの木下弦二さんの詩が、ものすごく深くなっていて、そのあたり意識、気持の変化についていろいろ話を聞いてみたかったのだ。

 新しい曲が二曲あって、一曲は今の心象風景、地元の戸越銀座の商店街のことなどを歌っているのだが、ただ、ちょっと暗いものになったから、この世界は、もっといいものだということもいいたいとおもって、もうひとつの曲を作った。昔の曲は、自分のことばっかり歌っているけど、それはそれで今歌うとわるくない。ライブのMCでそういうことをいっていた。
 ほんとうに新しいことにとりくんでいる。
            *
 東京に帰ってきて、ここ二、三日いろいろ物おもいにふけった。とくにお金と時間のつかい方について。いいかえれば、なんに力を注ぐか、集中するかについて。
 長年、食っていくことを目標としていて、それはそれでたいへんなのだけど、それとはちがう、高いのか遠いのかわからないような目標を持たないといけないなと。文章を書くことにかぎらず、長くいい仕事を続けている人は、自分にいろいろなものを課している。そのいろいろが何なのか。

 そのことを深く考えるためには、言葉だけでなく、もっと経験がいる。

 仕事ばっかりしていると、正直、息がつまる。本、読んでいても、活字が頭にはいってこない、心に響いてこない。
 文章を書けば書くほど、どんどん備蓄が減ってしまうような気がする。
 同業者なら、多かれすくなかれ味わうことだとおもうが、なんらかの補給路を確保しておかないと、すぐカラカラになる。
 といっても、からだはひとつ、一日は二十四時間、一年は三百六十五日しかない。しかも齢をとると、吸収力が低下してくる。同じようなことを続けていると、すぐ行きづまる。すくなくとも本にかんしては、それなりに目がこえてしまっているから、自分がおもしろいとおもえるものに、なかなか出あえない。
 だから視野と行動範囲をひろげる必要がある。
 しかしからだはひとつ、時間と金にも限度がある。
 だから効率をあげるしかない。でも無駄を減らすと心がすさむ。
 このあたりのかねあいをどうしているのか。

 それとも何か根本からあらためたほうがいいのか。