週末。朝から仙台に向う。
今年もサンモール一番街商店街で開催されたBook! Book! Sendai!の一箱古本市に駆けつける。
会場に到着してすぐ「古本酒場が午前十一時から営業しているよ」と誘われ、本を見る前に飲みに行く。
ふだんならまだ寝ている時間ということもあって、すぐ酔いがまわる。
商店街を何度も往復しているうちに、ほしい本が見えてくる。日頃の古書会館の古書展とちがって、会う人会う人と喋りながら、のんびり本が探せる。この感覚も楽しい。
もうBook! Book! Sendai!に活気があるのは当り前のことのように錯覚してしまいそうになるが、手作りイベントの延長でこれだけの本のお祭りが生まれたのはすごいことだとおもう。しかもたった四年で。
昼すぎ、書本&cafeマゼランに行って、喫茶ホルンで休憩する。昼メシは仙台っ子ラーメン。
マゼランではフィリップ・ロス著『素晴らしいアメリカ野球』(中野好夫、常盤新平訳、集英社文庫)などを買う。
会場に戻る。わめぞのブースはずっと大盛況で人が途切れない。この光景をもっといろんな人に見てほしい。本を作る仕事をしている人はとくに。
打ち上げにも参加し、今回もごはん屋つるまきに宿泊。
『痕跡本のすすめ』(太田出版)の五っ葉文庫の古沢さん、家主の若生さん、桑折さんと日本酒を飲みながら、雑談する。古沢さんは寝る直前までずっと喋り続けていた。無尽蔵のスタミナが羨ましい。
翌日、火星の庭に。わめぞ組が松島さかな市場に行くというのでいっしょについていく。
帰りは松島から遊覧船で塩釜に出る。二年前の秋にも乗った芭蕉コース。
ガイドさんは観光案内だけでなく、ときどき津波の被害を語る。ただし、いわれなければ、景色の変化はわからない。
やまびこの自由席で熟睡し、午後八時すぎに帰宅する。
夜は、高円寺のノライヌcafeで東賢次郎さんのライブ。途中から東さんの隠し球ともいえるビートルズメドレー(下ネタ)が盛り上がりすぎて、アンコールまでその路線が続いた。笑いすぎて苦しくなった。
2012/06/22
放電と充電
……神保町を歩いていて、足がふらつく。ひさしぶりの貧血だ。原因はたぶん酒の飲みすぎ。うどんと雑炊ばっかり食っていたせいもあるかもしれない。
高円寺駅を降りてすぐ焼鳥屋でレバー三本、ハツ三本買う。寝て起きたら、ずいぶん楽になった。
先日の古書展で買った本に、野村克也著『背番号なき現役 私のルール十八章』(講談社、一九八一年刊)がある。
四十五歳で現役を引退した後に刊行された本なのだけど、あとがきを読んで考えさせられる。
《現役時代は、「放電」(試合出場)のために、はっきりした「充電」(練習)の場がありました。背広を着つづけることになったいま、「充電」することのむずかしさを、かみしめている次第です。「本を読む」「人の話をよく聞く」——それもひとつの「充電」ですが、それだけでは「放電する量」に追いつけそうにありません。
その格差が広がれば広がるほど、かつての経験を“切り売り”するという結果になってしまいます》
現役のころの野村克也は、プロ野球選手としての素質ではさまざまなスター選手より劣っていた、不器用だったと告白している(謙遜も多少あるとおもう)。
たとえば、速球を待ちながら、変化球に対応するようなバッティングができなかった。その分、ピッチャーの癖を探したり、配球を読んだりする努力をした。
さらに三十八歳のときに禁酒もした。それでも体力は徐々に落ちる。
《体力アップは無理でした。下降線を、どれだけゆるやかなカーブにするかというテーマと、取り組んでいたのです》
体力が落ちた。
酒も残る。
本を読んでいても集中力が持続しない。
ここ数年、ちゃんと「充電」ができていない。
じっとしているより、迷走するくらいのほうがいい気もするが、どうなるかはまだ見えてこない。
高円寺駅を降りてすぐ焼鳥屋でレバー三本、ハツ三本買う。寝て起きたら、ずいぶん楽になった。
先日の古書展で買った本に、野村克也著『背番号なき現役 私のルール十八章』(講談社、一九八一年刊)がある。
四十五歳で現役を引退した後に刊行された本なのだけど、あとがきを読んで考えさせられる。
《現役時代は、「放電」(試合出場)のために、はっきりした「充電」(練習)の場がありました。背広を着つづけることになったいま、「充電」することのむずかしさを、かみしめている次第です。「本を読む」「人の話をよく聞く」——それもひとつの「充電」ですが、それだけでは「放電する量」に追いつけそうにありません。
その格差が広がれば広がるほど、かつての経験を“切り売り”するという結果になってしまいます》
現役のころの野村克也は、プロ野球選手としての素質ではさまざまなスター選手より劣っていた、不器用だったと告白している(謙遜も多少あるとおもう)。
たとえば、速球を待ちながら、変化球に対応するようなバッティングができなかった。その分、ピッチャーの癖を探したり、配球を読んだりする努力をした。
さらに三十八歳のときに禁酒もした。それでも体力は徐々に落ちる。
《体力アップは無理でした。下降線を、どれだけゆるやかなカーブにするかというテーマと、取り組んでいたのです》
体力が落ちた。
酒も残る。
本を読んでいても集中力が持続しない。
ここ数年、ちゃんと「充電」ができていない。
じっとしているより、迷走するくらいのほうがいい気もするが、どうなるかはまだ見えてこない。
2012/06/19
水道橋
……台風接近、だるい。午前中、業務スーパーとOKストアに食材を買いに行く。
昨日夕方、打ち合わせで水道橋。西口の三崎町方面に行く。学生時代、このあたりの出版関係の事務所でアルバイトをしていた。近くには少年画報社やベースボールマガジン社もある。見覚えのある喫茶店やラーメン屋が残っていた。
打ち合わせを終え、神田の古書会館で新宿展が開催中だったことをおもいだし、神保町まで歩く。
今年に入って、野球に関する本を軸に収集している。新宿展では某書店がたくさん出品していて、買い漁ってしまう。
二十代半ばごろも、一年くらい将棋と野球の本ばかり買っていた時期がある。一年で二〜三百冊くらい。ちょうど羽生善治さんが七冠王を達成するかしないかのころ、プロ野球はヤクルトとオリックスが日本シリーズを戦った年だ。
わたしの野球熱は、一九九五年のペナントレースがピークだったとおもう。朝から晩までスワローズのことを考えていた。
当時、ルーキーだった宮本選手や稲葉選手が、今年二〇〇〇本安打を達成した。
その間、いったい自分は何をしていたんだのだろう。
でも今は、二十代のころのわけもわからずに熱中する感覚を取り戻したい——それさえあれば、いや、それだけではラチがあかないこともいやというほど学んだわけだが、何かにのめりこむ感覚が弱まってしまうのはまずい気がしている。
昨日夕方、打ち合わせで水道橋。西口の三崎町方面に行く。学生時代、このあたりの出版関係の事務所でアルバイトをしていた。近くには少年画報社やベースボールマガジン社もある。見覚えのある喫茶店やラーメン屋が残っていた。
打ち合わせを終え、神田の古書会館で新宿展が開催中だったことをおもいだし、神保町まで歩く。
今年に入って、野球に関する本を軸に収集している。新宿展では某書店がたくさん出品していて、買い漁ってしまう。
二十代半ばごろも、一年くらい将棋と野球の本ばかり買っていた時期がある。一年で二〜三百冊くらい。ちょうど羽生善治さんが七冠王を達成するかしないかのころ、プロ野球はヤクルトとオリックスが日本シリーズを戦った年だ。
わたしの野球熱は、一九九五年のペナントレースがピークだったとおもう。朝から晩までスワローズのことを考えていた。
当時、ルーキーだった宮本選手や稲葉選手が、今年二〇〇〇本安打を達成した。
その間、いったい自分は何をしていたんだのだろう。
でも今は、二十代のころのわけもわからずに熱中する感覚を取り戻したい——それさえあれば、いや、それだけではラチがあかないこともいやというほど学んだわけだが、何かにのめりこむ感覚が弱まってしまうのはまずい気がしている。
2012/06/11
ビロビジャン
……先週、北海道からビロビジャンというユダヤ音楽(クレツマー/クレズマー)を演奏する二人組(小松崎健さんと長崎亜希子さん)が上京し、コクテイルとペリカン時代をハシゴ酒。
ビロビジャンを紹介してくれたのは、バウロン奏者のトシバウロンさん(アルバム『ビロビジャン』にゲスト参加している)。
六日(木)、高円寺のザ クルーラカンでビロビジャン、バロン&熊谷太輔のライブ、八日(金)、古書ほうろうでビロビジャンwithトシバウロン、ゲストは中原直生(イリアンパイプス)のライブを見に行った。
ビロビジャンの意味は《ハバロフスクから2〜3時間のロシア極東にあるユダヤ自治州の州都》(アルバムのライナーより)とのこと。
小松崎さんが演奏するハンマーダルシマーはペルシャで生まれ、中世にヨーロッパに伝わったピアノの原型といわれる楽器。六十四本の弦(弦の数はいろいろあるらしい)を木製の細長いスプーンのようなばちで叩いて反響させる。
そんな不思議な楽器をほぼ独学(ビデオを見たりとか)で習得したという。
*
数日後、沼野充義著『屋根の上のバイリンガル』(白水社)を再読する。
この本、ユダヤ系の少数言語のイディッシュ語の話が出てきた。昔、読んだときは、まさかイディッシュ語の話題が飛び交うような酒の席に出くわすことになるとはおもいもしなかった。
最終日の打ち上げで、高円寺南口のまんま みじんこ洞(=ミニコミ居酒屋)に案内したところ、たまたまアイリッシュ音楽がかかって、(わたしをのぞいた)一同が歓声を上げる。店の人に聞いたら、音源を持ち込んだのはトシバウロンさんの知り合いとわかって、つくづく世間は……。
ビロビジャンを紹介してくれたのは、バウロン奏者のトシバウロンさん(アルバム『ビロビジャン』にゲスト参加している)。
六日(木)、高円寺のザ クルーラカンでビロビジャン、バロン&熊谷太輔のライブ、八日(金)、古書ほうろうでビロビジャンwithトシバウロン、ゲストは中原直生(イリアンパイプス)のライブを見に行った。
ビロビジャンの意味は《ハバロフスクから2〜3時間のロシア極東にあるユダヤ自治州の州都》(アルバムのライナーより)とのこと。
小松崎さんが演奏するハンマーダルシマーはペルシャで生まれ、中世にヨーロッパに伝わったピアノの原型といわれる楽器。六十四本の弦(弦の数はいろいろあるらしい)を木製の細長いスプーンのようなばちで叩いて反響させる。
そんな不思議な楽器をほぼ独学(ビデオを見たりとか)で習得したという。
*
数日後、沼野充義著『屋根の上のバイリンガル』(白水社)を再読する。
この本、ユダヤ系の少数言語のイディッシュ語の話が出てきた。昔、読んだときは、まさかイディッシュ語の話題が飛び交うような酒の席に出くわすことになるとはおもいもしなかった。
最終日の打ち上げで、高円寺南口のまんま みじんこ洞(=ミニコミ居酒屋)に案内したところ、たまたまアイリッシュ音楽がかかって、(わたしをのぞいた)一同が歓声を上げる。店の人に聞いたら、音源を持ち込んだのはトシバウロンさんの知り合いとわかって、つくづく世間は……。
2012/06/06
休暇中
……週末から飲み続け、二日酔いになる。
うどんと雑炊を交互に食って、ガスコンロ磨きと風呂掃除をする。
夕方、北口の喫茶店に行って、さいとう・たかをの『ブレイクダウン』(リイド社)を読む。久しぶりに読んだら、自分の記憶が『サバイバル』とまざっていた。
小惑星が地球に落ちて荒廃した世界を生きのびる——という作品なのだが、主人公の上司が出世のことしか頭になく、徹底して胸糞悪いキャラクターとして描かれている。わたしならこの上司が崖から落ちそうになったときに助けない。
夜、北大路公子著『生きていてもいいかしら日記』(PHP文芸文庫)を読む。この本の文庫化はうれしい。北大路作品は全著作おすすめなのだが、とくに酔っぱらいとダメ人間に関する描写が素晴らしい。
《年が明けてから全然外に出ていない。ずっと家にいる。おそらくは正月の「朝酒から昼酒を経て夜酒に至る」という夢のような生活がきっかけで、もともと希薄だった社会性が完全に失われてしまったのだ》(引きこもりのつぶやき)
さらに『枕下に靴 ああ無情の泥酔日記』、『最後のおでん 続・ああ無情の泥酔日記』(いずれも寿郎社)も読み返し、最近、自分は働きすぎなのではないかと反省した。
家賃さえなければもっと遊べるのに、とおもう。
うどんと雑炊を交互に食って、ガスコンロ磨きと風呂掃除をする。
夕方、北口の喫茶店に行って、さいとう・たかをの『ブレイクダウン』(リイド社)を読む。久しぶりに読んだら、自分の記憶が『サバイバル』とまざっていた。
小惑星が地球に落ちて荒廃した世界を生きのびる——という作品なのだが、主人公の上司が出世のことしか頭になく、徹底して胸糞悪いキャラクターとして描かれている。わたしならこの上司が崖から落ちそうになったときに助けない。
夜、北大路公子著『生きていてもいいかしら日記』(PHP文芸文庫)を読む。この本の文庫化はうれしい。北大路作品は全著作おすすめなのだが、とくに酔っぱらいとダメ人間に関する描写が素晴らしい。
《年が明けてから全然外に出ていない。ずっと家にいる。おそらくは正月の「朝酒から昼酒を経て夜酒に至る」という夢のような生活がきっかけで、もともと希薄だった社会性が完全に失われてしまったのだ》(引きこもりのつぶやき)
さらに『枕下に靴 ああ無情の泥酔日記』、『最後のおでん 続・ああ無情の泥酔日記』(いずれも寿郎社)も読み返し、最近、自分は働きすぎなのではないかと反省した。
家賃さえなければもっと遊べるのに、とおもう。
2012/06/02
神宮球場
……5月末、二日連続で交流戦の日ハム×ヤクルト戦を神宮球場の外野自由席で観た。
一日目は完封負け(ヤクルト一〇連敗。引き分けなしの一〇連敗は五十九年ぶりだそうだ)で消化不良だったのだけど、二日目は畠山、飯原のソロ、ミレッジの満塁弾もあって、酒がうまかった。
ミレッジ、走塁も守備も全力で見ていてすごく楽しい。
出番はなかったけど、二軍から上がってきた松井淳も期待の選手。スタメンで見たいなあ。
仕事帰りにふらっと神宮球場に行って、野球を見ながら酒が飲む。上京してよかったとおもう。
試合がある日は一試合三時間、さらに新聞や雑誌を読み、データを調べたり、誰に頼まれたわけでもないのにチームの不調の原因を考えたり、なんやかやで五時間くらい消費してしまう。プロ野球ファンならよくあることかもしれないけど、気をつけないと昼も夜も野球浸りになる。
「こんなことをしている場合ではない」とおもいながら、やめるにやめられない。
だいたい五、六年周期でそういう状態になる。毎年だと身がもたない、というか、生活に支障をきたす。ところが生活に支障の出ない範囲で……なんていっているうちは、快楽は得られない。
この十年くらいずっと欲望を抑制し続けていた。昼酒もやめたし、ゲームもやめたし、漫画喫茶通いもやめた。
やめたらやめたでそのうち平気になることはわかった。
野球に関してもいずれそうなるかもしれない。
今年は無理だけど。
一日目は完封負け(ヤクルト一〇連敗。引き分けなしの一〇連敗は五十九年ぶりだそうだ)で消化不良だったのだけど、二日目は畠山、飯原のソロ、ミレッジの満塁弾もあって、酒がうまかった。
ミレッジ、走塁も守備も全力で見ていてすごく楽しい。
出番はなかったけど、二軍から上がってきた松井淳も期待の選手。スタメンで見たいなあ。
仕事帰りにふらっと神宮球場に行って、野球を見ながら酒が飲む。上京してよかったとおもう。
試合がある日は一試合三時間、さらに新聞や雑誌を読み、データを調べたり、誰に頼まれたわけでもないのにチームの不調の原因を考えたり、なんやかやで五時間くらい消費してしまう。プロ野球ファンならよくあることかもしれないけど、気をつけないと昼も夜も野球浸りになる。
「こんなことをしている場合ではない」とおもいながら、やめるにやめられない。
だいたい五、六年周期でそういう状態になる。毎年だと身がもたない、というか、生活に支障をきたす。ところが生活に支障の出ない範囲で……なんていっているうちは、快楽は得られない。
この十年くらいずっと欲望を抑制し続けていた。昼酒もやめたし、ゲームもやめたし、漫画喫茶通いもやめた。
やめたらやめたでそのうち平気になることはわかった。
野球に関してもいずれそうなるかもしれない。
今年は無理だけど。