土曜昼、高円寺の西部古書会館。ガレージのところで『観たい 聞きたい 記録(のこ)したい なべよこ観察隊』(中野区鍋横地域センター、一九九四年)。東高円寺駅、新中野駅界隈をよく散歩するようになって、“なべよこ”もなじみの場所になった。散歩圏の「ご近所本」を見つけると嬉しくなる。同冊子の付録(?)の「十貫坂周辺」という記事中、「丸谷才一著『低空飛行』の中に『ぼくの仕事部屋の窓から首を出すと、ちようど真下に中野十貫坂といふゆるやかな坂が見える』とあり、氏は昭和42年頃から数年、十貫坂に面したマンションに住んでいたということです」という記述も。
『低空飛行』(新潮文庫、一九八〇年)の「十貫坂にて」を読むと「数年前に、杉並と中野の境のところにあるアパートに引越した」と記されている。
丸谷才一は一九二五年八月二十七日生まれ。来月生誕百年。このエッセイでは、十貫坂の地名ついて「十貫目の荷物を持つて登ればちよつとこたえる。といふくらゐの由来なのだろうか」と推理する。同冊子によると「大量に積んだ大八車が十貫目(39kg)を超えると坂が登れなかったからだとか、中野長者の埋めた銭十貫文を掘り出したので坂の名になったなどいくつか説があります」とのこと。
他に『文化財シリーズ 板橋・熊野・仲宿・仲町 地区編』(板橋区教育委員会、一九九一年)、『無限大』特集「『異人その他』を読む」(一九八四年冬、日本アイ・ビー・エム株式会社)、『出雲に於る小泉八雲 改定増補版』(松江八雲會、一九三一年?)、大町桂月遺稿『十和田湖』(龍星閣、一九五二年)など。『出雲に於る小泉八雲 改定増補版』——奥付は昭和六年十一月と記されているが、昭和一桁に刊行された冊子にしては紙がちょっと新しい感じがする。とりあえず、刊行年は保留。大町桂月遺稿『十和田湖』は、青野季吉「ささやかなる心象」なども所収。大町桂月は福原麟太郎が愛読していたと知り、読んでみたくなった。
図録や冊子を探そうと棚を眺めていると知らないものばかりで楽しい。
この日、夜七時前、中野の大和町八幡神社の大盆踊り会(DAIBON)を見に行く。マツケンサンバ、盛り上がる。生ビール飲む。
昨年末に大和町に仕事部屋を引っ越した。大和町八幡神社から妙正寺川沿いの道を歩いてマルエツ中野若宮店に行くのが散歩コースの定番になった。
中野区大和町は瀬戸内寂聴が住んでいた。
(追記) 「付録」とおもっていた小冊子は一九九九年版の『観たい 聞きたい 記録(のこ)したい なべよこ観察隊』と気づく。九四年版の半分のサイズ(ページ数も少ない)、最後のページが「書き込み欄」(メモ帳)になっていて奥付はその前にあった。