2024/02/16

新居格随筆集

 二月十一日(日)、午前八時、高円寺駅の総武線のホームから富士山がきれいに見えた。小田急で小田原駅、JR東海道本線、身延線と乗り継いで西富士宮駅へ。
 この日は「ふじのみや西町ブックストリート」という一箱古本市(わたしも出品した)に参加した。おしるこ食べる。今月、編著の『新居格随筆集 散歩者の言葉』(虹霓社)が刊行――虹霓社も富士宮市の出版社である。二月二十二日発売予定。
 新居格は一八八八年三月、徳島県板野郡(現・鳴門市)生まれ。アナキストで戦後初の杉並区長でもあった。

 二〇一七年十月、秋山清のコスモス忌で虹霓社の古屋さんと会った。新居格著『杉並区長日記 地方自治の先駆者』(虹霓社)が復刊されたのもそのころである。
 新居格は高円寺に暮らし、雑文で生計を立てていた人物ということもあり、特別な親近感がある。

《わたしは微小な存在でしかないところの文士である。わたしは、それ故に、大きな存在でありたく望みはしない。わたしはわたしが書きうるものを書いて行くことでいゝ》(「小さな喜び」/同書)

《過去のことが古いのではなく、今日と明日のことが新しいのでもない。過去のうちにもあまりにも時流を抜いてゐたために埋もれてゐた新しさが無数にあるのだ》(「本と読書の好み」/同書)

 新居格の意見は温和なものが多い。戦前戦中に散歩と読書の日々を送り、平静を保ち続けた。

 西富士宮駅から富士宮駅まで歩く。浅間神社、人がたくさんいた。富士宮は二十代のころから何度か来ているが、町の雰囲気がのんびりしていて心地よい。ニジマスの養殖でも有名な土地だ。
 ペリカン時代で教えてもらった麺屋ブルーズに行きたかったのだが、午後二時から五時までは営業時間外だった。場所は覚えた。次こそは。

 JR在来線で藤沢駅まで行き、駅周辺をうろうろする。小田急で帰る。