2009/06/11

ひとりっこのツケ

 月曜日、BOOKONNの中嶋大介さんと退屈君、火曜日、扉野良人さんとPippoさんが高円寺にきて部屋飲み。扉野さん、Pippoさんとはいろいろ詩の話をしたのだが、まさかヘルマン・ヘッセの話でもりあがるとはおもわなかった。

 辻征夫の『かんたんな渾沌』(思潮社)の「谷川俊太郎についてのいくつか」という論考を再読した。
 谷川俊太郎はひとりっこで、そのせいかどうはわからないが、他人とどろどろするような関係に入らないし入れなかったと語っている。

《つまり、自分の鬱屈とも無関係でいられたみたいなさ、ま、それはたぶん、心理学者がいいうみたいに、母親に充分に愛されて一人でも安定していたということだと思うんですね》

 そう自己分析したあと、「ぼくはいま、そのツケを払っているんですよ、いってみれば」とつけくわえる。
 谷川俊太郎が払っているという「ツケ」がなにかはすごく気になる。

 意識の中では、人間との関係に入っていかなければならないとおもっている。それで入っていくのだが、どこか距離がある。
 四十代のはじめごろ、「私は私は」という自己表現の呪縛から逃れたという。
 ただし——。

《詩人の主体というのかな、どう生きるべきかみたいな、そういうものを根源に置かないとね、どうも詩が駄目だという感じがあるんですよ。いつでもその間を揺れ動いて来たんですね》

 この「揺れ動いて来た」という言葉にはっとさせられた。
 谷川俊太郎が、そういったことを考え、試行錯誤していたのは、四十代のはじめごろだった。

 わたしは詩を書いているわけではないが、昔とくらべれば、文章も自分の考え方も安定してきたとおもう。同時に谷川俊太郎がいうところの「主体」も、以前とくらべて弱くなってきた。
 不安定だけど(不安定だからこそ)、おもしろい文章がある。
 安定しているようにおもえるのは、いいたいことがこんがらがってうまく書けないことをはじめから書かず、書きやすいものだけを書いているからかもしれない。

 目先の仕事におわれて「どう生きるべきか」をかんがえなくなっている。「思想」あるいは「文学」にとって、いちばん大切なことは「どう生きるべきか」という問いのような気もする。

2009/06/07

おぼえがき

 最近、仕事のあいまの休憩所として、高円寺南口のルネッサンスという名曲喫茶に行くようになった。おそらく店の人は、中野の名曲喫茶クラシックの元関係者とおもわれる。最初に代金を払うシステム、調度品、レコード、いずれもクラシックを知っている人なら、きっとなつかしいとおもうにちがいない。ただし、床は傾いていない。

 ルネッサンスに行く前、都丸書店、大石書店、アニマル洋子をまわる。頭が古本の棚に反応しない。
 散歩を続ける。中通り商店街に行くと、素人の乱で味二番のイスが売っていた。味二番は、素人の乱の向いの、カツ丼やオムライスやカレーもある中華屋で、上京当初、すぐ近所に住んでいて、とにかく安かった。
焼きめしをよく食った。
 上京して半年ほど住んだ下赤塚の寮から高円寺に引っ越したときに、友人が味二番の角で車をぶつけて、修理代十三万円……。以来、引っ越しは“台車”でするようになった。

 何年か前に、中通り商店街のかきちゃんというラーメン屋もなくなった。この店のからあげラーメンとスタミナ丼が大好物だったので、閉店を知ったときは悲しかった。

 古本酒場コクテイルの石田千さんとのトークショーもどうにか終了。
『きんぴらふねふね』の話にもっていかなくてはとおもいつつ、ひたすら雑談になってしまった。
 仙台からブックカフェ火星の庭の前野さんが上京する。
 後半、東京堂書店の畠中さんにも挨拶してもらった。

 週明けのしめきりがいくつかあり、午後十一時すぎくらいに帰る。

 翌日もコクテイル。バサラブックスの福井さん、アスペクトの前田くんと飲む。

 午後十二時すぎに、火星の庭の前野さんも合流(新宿で南陀楼さん、古書現世の向井さんたちと飲んでいたらしい)し、コクテイル閉店後、前田くん、前野さんと三人で部屋飲みになる。前野さん、酒、強すぎる。午前四時、解散。

 土曜日、自分でも酒くさいのがわかるくらいの状態で仕事。まったくはかどらず、『カラスヤサトシ』(講談社)の四巻を読む。

 カラスヤサトシが宇野浩二のファンであることを知る。 

2009/06/01

六月

今日から仙台で「Book! Book! SENDAI 2009」がはじまります。
わたしも「わめぞ」の「古本縁日 in 仙台」(六月二十日、二十一日)にあわせて、仙台に行こうとおもっています。
ブックカフェ火星の庭の「文壇高円寺古書部」も大補充しますよ。

すこし先ですが、七月から河北新報の夕刊で隔週で二ヶ月間、エッセイを連載することになりました。

それから六月四日(木)、古本酒場コクテイルにて、石田千さんの『きんぴらふねふね』(平凡社)の刊行記念トークショーを行います。
開場:午後七時、開始:午後七時半。チャージ千円(要予約)。
聞き手はわたしです。

古本酒場コクテイル 店長日記(http://blog.livedoor.jp/suguru34/)に
店の電話とメールアドレスが出ています。