2012/12/10

雑記

 うどんを作り、残ったつゆに味噌とごまポン酢をいれて、雑炊にする。あとはひたすらコタツと布団(一メートルも離れていない)を行ったり来たりする。

 布団の中で『文學界』一月号を読む。星野博美さんの新連載「みんな彗星を見ていた」が掲載されている。
 まず自分が興味を持つ理由を突きつめてから取材をはじめる。今回は歴史ノンフィクションになるのかなあ。先の展開がまったくわからない。
 これから毎月楽しみだ。

 ちょっとだけ外出して、家に戻ると山本善行著『定本 古本泣き笑い日記』(みずのわ出版)が届く。この日記、山本さんが四十代のころに書きはじめたもので、つい今の自分と比べながら読んでしまう。
 この古本への情熱はどこからくるのだろう。さっそくパラフィンをかける。

 先週は京都から東賢次郎さんが高円寺に来ていて連日飲み明かした。
 先月、東さんは放送禁止ソング界の重鎮のつボイノリオのラジオ(KBS)に出演し、「イエスタディ」の替え歌(下ネタ)を披露——。番組の後半部ではなぜかユーロ危機や中国経済の話などをしていた。謎すぎる。

 わたしは三重にいたころ、CBCのつボイノリオの番組によくハガキを出していた。その話をすると、東さんが『群像』の編集者時代に担当していた某作家(岐阜県出身)もつボイノリオの熱烈なファンであることを教えてくれた。

 中学時代に校内暴力で荒れまくっていた学校に通っていたのだが、つボイさんの番組でペンネームではなく、まちがって本名を読まれてしまったことがあった。
 翌日、下級生の誰もが怖れていた同じ部活の先輩が、自分のところに来て、「俺もあの番組にハガキを出しとるんや」といわれ、ペンネームを教えられた。
 なんとなく自分以外にも鈴鹿の人でよく読まれる人がいるなとおもっていたら、その先輩だった。

2012/12/08

空洞

 かれこれ二十年以上、わたしは鮎川信夫著『一人のオフィス 単独者の思想』(思潮社、一九六八年刊)を読み返している。
 まちがいなく家にある本の中で再読回数が多い本である。
 インターネットの古本屋がなかったころ、探しに探してようやく見つけた。
 たまに自分が紹介した本を読んだ人に「いうほどおもしろくなかったよ」みたいなことをいわれる。好みは人それぞれである。わたしは一冊の本と出あうまでの時間も読書の楽しみだとおもっている。
 その人の書いたものを一冊一冊読み続けて、ようやくそのすごさがわかることもある。

(……以下、『閑な読書人』晶文社所収)

2012/12/05

寄り道

 仕事が一段落。といっても、年末進行中であることには変わりない。

《立派な書斎で机に向って、庭の眺めを眼にして終始書いているような作家の書くものに道筋がないのは当然だ。歩きながら立止まらずに眺め、考え、発見する人々の話には、少なくとも道筋がある》(「余白の告白」/辻まこと著『続・辻まことの世界』みすず書房、一九七八年刊)

 立派な書斎も庭もないが、コタツでずっと本を読んだり、文章を書いたりしていると、どうしても行き詰まってくる。三十代半ばをすぎたあたりから、仕事帰りに寄り道をしなくなった。酒も近所の飲み屋か家でしか飲まない。寄り道なんてものは、別にしなきゃいけないとおもってするものではないが、しなきゃいけないとおもわないとできなくなる。たまにはフィールドワークのようなことをしないといくら本を読んでも消化できないかんじが残る。もうすこし歩く時間を増やしたい。