2017/03/01

待望の続篇

 三月になった。数字が二から三になっただけなのだが、ほっとする。
 冬は寝起きがつらい。起きてから、数時間、指に力が入らない。指に力が入らないと何もできない。靴下をはくことさえ難儀だ。
 起きたら、まず給湯器のお湯で手を温める……ということを教えてくれたのは、ライターの先輩のNさんだ。
 からだというのは、けっこう気分にも左右されるものだが、ただ、お湯で温めるだけで動かない指が動くようになる。目も覚める。
 アンディ・ルーニーの「ものごとがうまく行かなかったら、熱いシャワーを浴びよ」(『自己改善週間』晶文社)という言葉にもずいぶん助けられた。
 気力でどうにかしようとして、どうにもならなかったことが、給湯器のお湯や熱いシャワーや貼るカイロで多少はマシになる。

 春になったら、もうすこし活動量を増やしたい……とおもっていたところ、フライの雑誌社から牧浩之著『山と河が僕の仕事場2』が届いた。本といっしょに入っていたチラシの「映画化!したらいいな」という文句を見てクスっとなる。
 フライフィッシングの毛鉤職人(プロタイヤー)をしていた牧さんは宮崎県にIターン移住し、猟師、野菜作り、さらに原木をもらってきてシイタケも育てる。
 ワイルドだけど、清々しいくらいマジメだ。真剣に生きている。そのかんじが文章にも出ている。
 とくに第三章の「家族の肖像」がよかった。読んでほしい。わたしは何度も読み返すとおもう。いい本ですよ。

 前著『山と河が僕の仕事場 頼りない職業猟師+西洋毛鉤釣り職人ができるまでとこれから』も重版になったそうです。めでたい。