2023/01/08

古書展

 土曜日、今年最初の西部古書会館。暇つぶしに読む本を……くらいのつもりで棚を見ていたら、カゴいっぱいになった。
 買ったのは『井伏文学のふるさと』(ふくやま文学館、二〇〇〇年)、『昭和の風俗画家 長瀬寶』(大磯町郷土資料館、一九九〇年)、『こぶし 鉄道百年記念号』(東京西鉄道管理局 一九七二年、非売品)、他に街道関係の紙ものなど。

『こぶし』の鉄道百年記念号に「中央線鉄道唱歌」(福山寿久作詞、福井直秋作曲)が載っていた。一九一一(明治四十四)年の作。

《五 「中野」「荻窪」「吉祥寺」 「境町」より十余町 多摩上水の岸の辺は 桜ならざる里もなし》

 当時「高円寺」「阿佐ケ谷」「西荻窪」はなかった(この三駅は一九二二年開業)。この冊子の「中央線鉄道唱歌」は「二十」の「小淵沢」まで。中央線の唱歌はまだまだ続く。明治末、東京〜甲府間は約六時間かかった。甲州街道を徒歩で行くと三、四日、今は特急に乗れば一時間四十分である。

 時代と共に移動の速度は上がる。移動時間の短縮により、世の中が変化する。しかし変化の速度はしだいにゆるやかになる。進歩の鈍化といえばいいのか。技術の世界にかぎらず、表現の世界にもそういうことがあるようにおもう。

2023/01/06

仕事始め

 水曜日、神保町、神田伯剌西爾、マンデリン。古本屋をまわる。

 家に帰ると金井タオルさん編集の『月刊つくづく』一月号が届いていた。ホチキスで止めた手作り冊子。定価百円。金井さん、この三年間ひたすらミニコミを作り続けている。わたしはこの号で金井さんの雑談の相手をした。
 以前、金井さんにインタビューしてもらったこともあるのだが、こちらが言いよどんでも、うまく拾ってくれるので、すごく話しやすかった記憶がある。

 今回の雑談は高円寺の喫茶店で一時間くらい。そのあとのほうがいっぱい喋った。終電、間に合ったのか。

 年が明け、(完全に自分のせいで)止まっていた仕事にとりかかりはじめる。本調子になるまで待っていたら何も進まない。一歩ずつやるしかない。わかっていても、いや、言い訳はよそう。とりあえず、作業のための時間を作る。どのくらいで形になるか、量は足りているのか、ゴールがぼんやりとでも見えるところまで行ければどうにかなる。まだ何も見えない。

2023/01/03

正月

 年末年始、高円寺で過ごす(阿佐ケ谷まで散歩したが)。おせちを食べた。一日、氷川神社も馬橋稲荷神社も人でいっぱいだった。初詣は二日にした。町に人があまりいない。年中無休の店もあるが、三日か四日まで休みの店が多い。

 年末から晴天続き、星がよく見えた。気温は低いが風がないので歩きやすい。

 電子書籍で漫画のセールがいろいろあり、五十冊くらい購入した。星里ちもる『夜のスニーカー』(ゴマブックス&ナンバーナイン)を読む。連載時期は二〇〇九年〜二〇一〇年(「週刊プレイボーイ増刊 漫'sプレイボーイ」など)——。

 主人公の男性はウォーキングが趣味。第一話では合コンで知り合った女性とホテルにいっしょに入るが、何もせずに出て歩いて高円寺のアパートに帰る。鞄の中には常にウォーキングシューズが入っている。
 その後、飲み会で知り合うヒロイン(書店員)は中野に住んでいる。二人とも異性にたいし、苦手意識を持っているのだが、いっしょに歩いているうちに……という話。

「歩いて高円寺まで!?」「こっからだと3時間は歩きますよ」というセリフがある。

 どこから歩いたのかは描かれていないが、徒歩三時間は約十二キロ。日本橋〜高円寺がだいたいそのくらいの距離である。別の飲み会のシーンでは東京タワーが見える場面があったので品川あたりから歩いたのだろうか(確証なし)。

 最近、漫画を読んでいて、この場所はどこらへんだろうとよく想像する。正月に読んだ別の漫画で登場人物(小説家)が歩いている道を見た瞬間「ここは青梅街道の荻窪付近かな」と……。

『夜のスニーカー』は特別読み切り「晴れた日に遠くが見える」という短篇も収録——。漫画家志望の高校生が主人公で住んでいるのは方言の感じから九州(たぶん福岡県)だろう。この作品も川沿いの絵が素晴らしい。でも何という川なのかはわからない。