2024/06/25

山梨縣観光案内図

 土曜の昼、西部古書会館。『山梨縣観光案内図』(日本観光案内社/静岡市)が三百円。金沢書店(東中野・神保町)が出品。山梨の鳥瞰地図はずっと探していた。嬉しい。
 地図の作者は内藤雅文。作者名、丸一日わからなかった。山梨県と東京の県境付近、奥多摩あたりに赤い丸に囲まれた赤い文字で「ないとう」+違う字体の黒字で「雅文」と記されている。生没年不詳。
 地図の裏に山梨の名所の写真。
 別紙の身延山案内に山梨交通株式會社の広告がある。山梨交通の発足は一九四五年二月。地図の裏に山梨交通のロマンスカー(バス)の写真あり。昇仙峡あたりを走っていたとおもわれる。
 地名その他の漢字の表記を見ると旧字体と新字体が混ざっている(新字体は一九四九年〜)。地図を見ていると石和駅(現・石和温泉駅)付近に赤字で「小松農場」と記されている。地図裏の写真のキャプションには「本邦無比小松遊覧農場」とある。
 ブログ「観覧車通信」の「懐かしの遊園地 山梨県・小松遊覧農場の観覧車」に同社の創業は一九〇七年(現在の会社設立は一九五一年)とあった。同ブロクの作者は『観覧車物語』(平凡社、二〇〇五年)などの著作がある福井優子さん。『山梨縣観光案内図』の小松農場の写真には観覧車らしきものは写っていない。広い果樹園のように見える。

『山梨縣観光案内図』の発行年は旧字体と新字体の移行期、一九五〇年前後かなと……。

 すこし前に読んだ土橋治重著『甲斐路 日本の風土記』(宝文館、一九五九年)に「石和及び笛吹川附近」(内田義広)の「果実郷の随所から三十八度の温泉が湧出」し、「石和温泉郷の名で呼ばれ、親しまれる日もま近なことであろう」と記されていた。
 わたしは石和温泉が好きで町も気にいっている。笛吹市と甲府市の境あたりに宿をとり、甲州街道を歩く。すこし歩くと酒折の古道もある。石和が温泉郷になったのは昭和三十年代でそんなに昔の話ではない。

(追記)『山梨縣観光案内図』の別紙、頁が抜けている(……ことに後日気づいた)。