2024/09/25

武蔵野

 土曜昼、西部古書会館。古雑誌、写真集、図録など。『武蔵野文学散歩展』(江戸東京たてもの園、二〇〇四年)は二冊目(何年か前に買っていたのを忘れていた)。巻末「武蔵野文学年表」は、国木田独歩、田山花袋、井伏鱒二、太宰治、大岡昇平の年譜が並ぶ。
 一九三二(昭和五)年の井伏鱒二。「夏ごろ、釣りを始める」とある。井伏三十四歳。この年の五月、井伏鱒二は太宰治と会う。

「武蔵野」と呼ばれる地域はけっこう広い。国木田独歩の「武蔵野」は渋谷から桜の名所の小金井あたりが舞台である。

『武蔵野文学散歩展』の「Ⅰ 武蔵野への憧れ」には「中仙道の最初の宿場・板橋は独歩のいう〈武蔵野〉の東の境界」とある(あくまでも独歩の見解)。川越以南から府中あたりまでを「武蔵野」とする説もあり。
 JR三鷹駅北口に国木田独歩詩碑(独歩の二男・佐土哲二による独歩像のレリーフがはめこまれている)がある。武蔵境の桜橋にも独歩の文学碑がある。三鷹駅から玉川上水沿いの桜通りを斜め(北西)に歩けば桜橋にたどり着く(武蔵境駅からだとまっすぐ北に歩けばいい)。近くに境浄水場もある。

「Ⅱ 広がる東京と武蔵野」の「田山花袋と東京の近郊」のページに「東京郊外電車回遊図絵」(金子常光作、大東京交通協会、一九二九年)という郊外電車の案内図(鳥瞰図)が載っている。東は成田、西は小田原、北は高崎までの地図。東京湾と所沢付近に飛行機の絵も。金子常光は吉田初三郎の弟子で、初三郎と画風も似ている。平野は黄、山は緑。色づかいが素晴らしい。金子常光の絵地図も人気があり、古書価がついている。

 同図録、貴重な古地図(一八九〇年の「甲武鉄道線路略図」など)がいっぱい出てくるので、地図好きにもおすすめ。

(付記)「東京郊外電車回遊図絵」の「回遊図絵」を「回覧絵」と書いていた。訂正した。