秋時雨は現在の暦だと晩秋(十月下旬から十一月上旬)の言葉らしい。
九月三十日(水)、東京都心で三十五日連続の降水(統計史上最長記録を更新中。以前は二〇一九年の三十三日が最長だった)。九月の都心の日照時間の短さ(四十五・八時間)は過去二番目とのこと(観測史上最短は一九八八年九月、三十九・二時間)。
わたしが上京したのは一九八九年の春なので日照時間の最短記録の年は知らない。一浪して名古屋の予備校に通っていたころなのだが、当時の記憶はほとんどない。中日ドラゴンズがセ・リーグ優勝を決めたが、祝賀行事を自粛したのは覚えている。
九月二十六日(土)、午前中に西部古書会館。会計のさい、買った本を二袋に分けてもらった。図録などが入った袋をレジに忘れる。知り合いの古書店員さんに忘れた古本を近所の飲み屋に届けてもらった。日曜日の夕方、取りに行った。ビールと角の水割を飲んだ。
忘れたほうの袋に入っていたのは塚本邦雄著『新歌枕東西百景』(毎日新聞社、一九七八年)、『写真集 明治ジャパン 風俗編』(トーアフォート、一九八三年)、『小林清親展 江戸から東京へ』(読売新聞社、一九九一年)、『川越の歴史散歩』(川越民報編集委員会、一九九九年)など。頭がまわらないとき、目が疲れたとき、昔の写真、風景画を眺める。『小林清親展』の図録に「下総真間つぎ橋」「真間弘法寺」の版画があった。また真間川沿いの道を歩きたくなる。高橋虫麻呂の歌碑を確認したい。
他にも「九段坂五月夜」(一八八〇年作)に一八七一年に建てられた高燈籠(その後、九段坂公園に移設)が描かれている。神保町から四ツ谷駅まで靖国通りを歩いていると高燈籠の前を通る。高燈籠の近くから東京スカイツリーと東京タワーが見える。
昔の写真や絵を見ると時間旅行をしている気分になる。
秋の七草(萩、尾花、葛花、撫子の花、女郎花、藤袴、朝貌の花)は万葉の歌(山上憶良)に詠まれている。奈良時代の文化が今の時代にも伝わっている。
四十代半ばすぎに街道の研究をはじめ、和歌の歌枕に興味を持った。街道歩きをしているとあちこちに万葉の歌碑がある。西行や芭蕉の歌や句もよく見かける。
昔の作家の随筆を読んでいると、読者に古典の知識があることを前提にして書いていることが多い。万葉、古今、新古今あたりの和歌は知っていて当然といった感じで書いている。
わたしはわからないまま読んでいた。わからないまま読んでいても、頭の片隅にちょこっと残る。
上京するまで横浜には一度も行ったことはなかったが、子どものころに観ていた刑事ドラマなどの影響で「この場所、知っている」とおもうことがよくある。古典もそういうところがある。いつの間にか知っている。でもふだんは忘れている。急におもいだす。自分の古典の記憶は野球とか相撲とか漫画とかアニメとか、別のジャンルが絡んでいることもある。
近鉄特急の「あをによし」も万葉集からとっている。いい命名だなとおもった。