土曜昼すぎ、高円寺西部古書会館大均一祭。初日(全品二百円)は宮内庁三の丸尚蔵館編『をくり 伝岩佐又兵衛の小栗判官絵巻』(一九九五年)、山根ひとみ+葦の会『街道を歩こう』(廣済堂出版、一九九九年)、郷津弘文著『千国街道からみた日本の古代 塩の道・麻の道・石の道』(銀河書房、一九八六年)など五冊。『をくり』の照手姫がいた青墓の宿の絵を見る。中世の美濃の垂井〜青墓あたりは交通の要所ということもあるが、かつてはかなり裕福な土地だった。昨年、相模市の上溝(照手姫の伝承が残る)も歩いた。小栗判官は美濃廻り東海道、熊野道、北陸道など、中世の街道や宿場町が舞台になっている。又兵衛(の作といわれる)小栗判官絵巻は三百メートル以上もあった。
『街道を歩こう』は「ウォーキングBOOK」というシリーズで他の本も気になる(読みたい)。
日曜昼すぎ、大均一祭二日目(全品百円)。林英夫ほか著『旅と街道 朝日カルチャー叢書』(光村図書、一九八五年)、山本周五郎著『青べか日記 わが人生観』(大和書房、一九七一年)、西東三鬼著『神戸・続神戸・俳愚伝』(出帆社、一九七五年)、伊藤正雄著『伊勢の文学』(神宮文庫、一九五四年)、小池正胤著『膝栗毛の世界 NHK文化セミナー 江戸文芸をよむ』(NHK出版、一九九六年)ほか十六冊。西東三鬼の本、昨日は見かけなかったから補充されたのか(それとも見落としていたのか)。西東三鬼の『神戸・続神戸・俳愚伝』は講談社文芸文庫、また『神戸・続神戸』は新潮文庫にも入っているが、矢牧一宏の出帆社の函入本は嬉しい。『旅と街道』の背表紙は「林英夫ほか」となっているが、新城常三、児玉幸多といった街道研究の第一人者も講師をしている。一九八三年の朝日カルチャーセンター講座「旅と街道」をまとめた書籍である。
月曜昼すぎ、西部古書会館三日目(全品五十円)。『重要伝統的建造物群保存地区概要 海野宿』(東部町教育委員会、一九八七年)、『考える人』特集「あこがれの老年時代」(二〇一〇年冬号、新潮社)など十四冊。三日で三十五冊か。『海野宿』はガレージのところの古雑誌の間に埋もれていた。海野宿は信州・北国街道の宿駅。北国街道は信州と越後をつなぐ街道である。『考える人』はロングインタビュー「橋本治 年をとるって?」が読みたくて買った。
《年をとるってどういうことかというと、自分が年をとっていることをつねに発見しつづけることみたいですよ》
《老いというのはやすらぎかもしれない。やすらぎたいと思うと、老人にあこがれるんじゃないかな》
橋本治は一九四八年三月生まれ。インタビューは二〇〇九年十一月に行われている。六十一歳。『新潮45』の連載「年をとる」は二〇一四年一月号からはじまっているので、その四年ちょっと前のインタビューだ。「年をとる」は『いつまでも若いと思うなよ』(新潮新書、二〇一五年)の元になった連載である。
十年、十五年前がほんのすこし前のようにおもえる。『いつまでも若いと思うなよ』に「年寄りは、今のことに関心がない。関心を持とうとしても、どうも頭に入りにくい」とある。
自分が六十代になるのも、そんなに先の話ではない。新しいことへの興味が薄れると変化を望まなくなる。今まで通りのほうが楽だから、変化を必要としなくなる。
かつての老人はそれでよかったのかもしれない。二、三十年という周期で世代が交代し、世の中も移り変わった。今は高齢者が増え続け、変化を堰き止めているようなところがある(わたしもその一員になりつつある)。