2021/03/04

早稲田古本村通信の話

 もう三月。昨年の今ごろはマスクが買えなかったり、トイレットペーパーが売り切れの店が続出したりした。あれから一年。

 復刊した「早稲田古本村通信」(メールマガジン)毎号面白い。古書現世の向井透史さんの古本の話、昔、BIGBOXの古本市でセドリしたある署名本を千五百円で古書目録に載せたところ、とんでもない数の注文が……。

 失敗をくりかえし、悔しいおもいをしながら仕事を覚える。

 インターネットの古本屋が普及する前、古本の値段は店ごとにかなり幅があった。なぜこの本はこんなに高いのだろう。稀少価値か、それとも何か他に理由があるのか。それを知ることも古本屋通いの楽しみのひとつだった。

 わたしが「早稲田古本村通信」で「男のまんが道」を書きはじめたのは二〇〇五年秋、かれこれ十五、六年前だ。出来不出来はさておき、月一回、テーマに沿った原稿を書くことは勉強になったし、連載中に最初の単行本も出た。その後「高円寺だより」というエッセイも「早稲田古本村通信」に書いた。連載前に向井さんから「若い人向けの文章を書いてみませんか」といわれた。当時、読者として想定していた若者も四十歳くらいか。いまだに君づけで呼んでしまう。前田君とか。