春先、飲み屋でひとり暮らしをはじめた若者に会うと「一日五分でもいいから毎日部屋を換気したほうがいいよ」と助言していた。とくにインドア趣味の人。家に長時間こもっていると空気が澱む。
最近は同世代の酒飲みに水分補給の大切さを説いてしまう。酒を飲んだ翌朝(翌昼)、寝起きに足をつったりするのは水分不足のせいだ。風呂に入る前や後も水を飲む。五十代以降、咽の渇きが鈍くなった。散歩のときも気をつけている。
四月四日(土)から西部古書会館の大均一祭(初日一冊二百円、二日目百円、三日目五十円)。三日連続で行く。
初日は『第八回特別展図録 絵図の世界 ふるさとの風景の移りかわり』(土浦市立博物館、一九九二年)、『ダブル・インパクト 明治ニッポンの美』(芸大美術館ミュージアムショップ/六文舎、二〇一五年)、『少女ロマンス 高橋真琴の世界』(PARCO出版、二〇〇四年)、吉田健一『吉田茂・大磯清談』(文藝春秋新社、一九五六年)、富岡多恵子著『歌・言葉・日本人』(草思社、一九七二年)など。
今回買った本はハンコが押してあったり、鉛筆の書き込みがあったり、背焼けしていたり、読む分には問題ないが、やや難ありのものが多い。『絵図の世界 ふるさとの風景の移りかわり』は茨城県土浦市内の絵図を収録した図録である。水戸街道の土浦宿、旧街道の風景が残っている。鎌倉古道も通っていた。前に、土浦を歩いたのは雪の日だったので、晴れの日に訪れたい。
『吉田茂・大磯清談』は何年か前に手放してしまったので買い直した。大磯も好きな宿場町だ。西に向かって歩いていると富士山が正面に見える。
富岡多恵子著『歌・言葉・日本人』は装丁が気になって手にとる。扉を見たら湯村輝彦だった。
『ダブル・インパクト 明治ニッポンの美』はボストン美術館と東京藝術大学のコレクションを合わせた展覧会図録。これは当たりの予感。同図録の「日本画誕生」によると、「日本画」は「西洋画に対して自国の絵画を対峙させるために〈必要とされた〉絵画ということができる」とある。
明治以降、「西洋画」が入ってきたことで「日本画」という新しいジャンルが生まれた。絵にかぎらず、文学や音楽もそうした流れがあるようにおもう。
二日目は鳥越憲三郎・文、柴田秋介・写真『カラー 吉備路の魅力』(淡交社、一九七九年)、「江戸川ブックレット 古文書にみる江戸時代の村とくらし② 街道と水運』(江戸川区教育委員会、一九九一年)、『古地図ライブラリー2 嘉永・慶応 江戸切絵図で見る 幕末人物・事件散歩』(人文社、一九九五年)、『自然読本 夢・眠り』(河出書房新社、一九八一年)、フィリップ・ホセ・ファーマー著『異世界の門 階層宇宙シリーズ〈2〉』(浅倉久志訳、ハヤカワ文庫、一九七四年)など。
『カラー 吉備路の魅力』は初日に見なかった。見落としたのか補充したのか。今回の大均一祭で一番の収穫だった。写真もいい。あとがきに「吉備はわたしの故里である。古代史の研究に手をつけはじめてから、故里だけに解明したいという熱望に燃えていた」とある。鳥越憲三郎は環境社会学の鳥越皓之の父でもある。
『幕末人物・事件散歩』は「江戸幕府鉄砲組百人隊」(江戸幕府鉄砲組百人隊保存会)の資料のコピー(二〇〇二年?)が挟まっていた。古本は嬉しいおまけが付いてくることもある。
『異世界の門』は深井国の装丁。深井国(一九三五年〜)は一九六〇年代につげ義春と同居生活を送っていたこともあるイラストレーター。
原題は「THE GATE OF CREATION」。階層宇宙シリーズが「The World of Tiers」で直訳すると「階層世界」。浅倉久志はこのシリーズ名から『異世界の門』と訳したのかもしれない。
月曜の大均一祭のあと、馬橋公園散歩。東側の芝生で花海棠(ハナカイドウ)を見る。バラ科リンゴ属の落葉低木。西側の喫煙所の近くに牡丹桜も咲いていた。牡丹桜は染井吉野より咲くのが遅い——というのは尾崎一雄の短篇「苔」を再読して知ったばかり。馬橋公園からすこし歩いてお伊勢の森のバス停のちかくの大和町の蓮華寺で枝垂れ桜を見る。葉桜になりかけ。御衣黄(ギョイコウ)という薄緑の花の桜もある。八重桜の一種らしい。