2024/04/12

蓮華寺

 花粉か黄砂か、目とのどが痛い。昨年、この時期、急性結膜炎になり、体調を崩した。外出時、なるべくマスクをするようにする。それにしても五十代、調子のいい日が四十代の半分あるかどうかだ。スローダウンを心がける。体に心を合わせていく。

 古木鐵太郎著『文芸随想』(非売品、一九八二年)を日本の古本屋(古書うつつ)で買う。発行者は古木春哉。布張りのカバーがいい。最初、裸本かとおもった。「移りゆく武蔵野」(一九三六年)の一節。

《自分が初めて野方に越して来た頃は、家の近くには所々空地があつたが、またゝくうちにその空地にも隈なく家が建つてしまつた。越した当座は、それまでゐた所が高円寺であつた故か、今度の所は如何にも長閑で、一寸別天地といふ様な気もした》

「鷺宮」(一九三九年)という随筆もよかった。

《この鷺宮に越して来てからもうすぐに一年だ。こゝが前居た野方よりいゝ点は、四辺の広々としてゐること、空気のいゝことである。家の前には広い草原があり、その向うが低くなつて田圃、田圃の中には西武電車が走つてゐる》

 古木鐵太郎は高円寺、野方、鷺宮と転々と引っ越している(大和町にも住んでいた時期がある)。特別なことが書いてあるわけではないのだが、こういう文章を読んでいると気持が落ち着く。野方、鷺宮あたりの風景はものすごく変わった。もちろん高円寺も。

 時間が経つにつれ、身辺雑記や日記の中で切り取られた時間が貴重なものになる。古木鐵太郎の文章は素朴でひねりがない。新しさはないが、古くならない。

 土曜昼、西部古書会館の大均一祭(初日)、一冊二百円。七冊。おでん作る。
 日曜日、馬橋公園の桜を見てから早稲田通りの高円寺と阿佐ヶ谷の間あたりのすこし北にある泉光山蓮華寺(中野区大和町)の「花まつり」に行く(一週間前、鷺ノ宮を散歩した帰りにも寄った)。お伊勢の森のバス停のすぐ近く。

「花まつり」は毎年四月の第一日曜に開催している。甘茶を飲む。歴史ユーチューバーのミスター武士道さんがクイズを出していて、子どもたちに大受けだった。ミスター武士道、三重県四日市市出身と知る。
 桜の季節、あっという間に終わる。