2018/02/17

寒がりと怠けたがり

《私のおやじも寒がりだったし、うちの息子も寒がりだ。寒がりの上に、なまけものだ。(寒がりと怠けたがりにも何か関連あるらしい)》

 梅崎春生の「聴診器」というエッセイの一節。来週発売予定の梅崎春生著『怠惰の美徳』(中公文庫)にも収録している。今回のアンソロジーは梅崎春生の「怠け者」の面を軸にして編集した。解説もわたし。戦争文学だけではない、梅崎春生のゆるくて、ぐだぐだした魅力を伝えられたらとおもっている。カバーの絵(平木元さん)、デザイン(細野綾子さん)もすごく気にいっている。

 寒がりと怠けたがりは関連あるのかどうか。わたしも寒さが苦手で横になってごろごろしているのが好きだ。
 今日も起きてから、ずっと頭がぼんやりしている。毎日やろうとおもっていることの三分の一くらいのことしかできない。「それが自分なんだ」と開きなおる気力もわいてこない。

 昨年秋、福岡を訪れたとき、梅崎春生の生家付近をメモをとりながら散策したのだが、いざ書いてみると取材した文章の部分が妙にゴツゴツしていているような気がして(よくあることだ)、全部カットした。
 昔の自分だったら、他の部分を削って取材した部分を残していたかもしれない。齢とともに、文章における取捨選択の感覚が変わった。

 できない三分の二より、できる三分の一を大事にする。しかし、できる三分の一も年々摩耗していく。だから、できない三分の二に取り組む必要がある。わかっているのだけれど、その気になれなくて困っている。

2018/02/14

私の好きな中公新書

 WEB中公新書の「私の好きな中公新書3冊」というコーナーに「文学から都市を愉しむ」という原稿を書きました。

 http://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/105596.html

 なるべく新刊書店で買える本……とのことだったですが、菊盛英夫『文学カフェ ブルジョワ文化の社交場』と上岡伸雄『ニューヨークを読む 作家たちと歩く歴史と文化』は品切れ。『ニューヨークを読む』は電子化されています。『ニューヨークを読む』は、アメリカ文学好きにおすすめしたい本。読後、小説の読み方が変わった。
 川本三郎『銀幕の東京 映画でよみがえる昭和』は、東京を舞台にした文芸映画もたくさん取り上げている。わたしはあまり映画を観ないのですが、それでもおもしろかった。
 菊盛英夫の『文学カフェ』は、あとがきに新居格や高田保の名前が出てくる。若き日の菊盛英夫は新居格に東京のカフェに連れ回されていたらしい。以上、補足。

2018/02/10

三好十郎「歩くこと」

 二十年、三十年と古本屋通いをしていると、たとえ未読であっても、作家の名前くらいは何度も目にしているから知っている……つもりになっていることがよくある。
 でもたまになんで知らなかったのかとおもう作家が出てくる。まったく知らなかった昔の作家に興味を持ち、インターネットで検索してみたら、おもっていたよりも著作がいっぱいあって驚く。

 わたしは三好十郎を知らなかった。自分のアンテナに引っかからなかった。名前を見ても、何を書いた人なのかさっぱりわからない。
 青空文庫に作品がいろいろ入っていたので、その中から「歩くこと」というエッセイを読んだ。
 長年、自分が散歩をしたり、旅行をしたりしているときに意識していたことが書いてある。嬉しくなった。もちろん、エッセイを一、二篇読んだくらいでは三好十郎がどんな人物なのかはわからない。だけど、「歩くこと」の一篇で好きになった。一行一行、すべての言葉に魅了された。
 たぶん、自分とは性格や資質はちがうような気がするが、「考えようとしていること」が重なっている。そんなふうおもえる人はひさしぶりだ。

 最初、「歩くこと」はキンドルで読んだのだが、本の形で読みたいとおもい、『三好十郎の仕事』(全三巻+別巻、學藝書林)を日本の古本屋で注文した。