すこし前にマンションの更新があり、写真入りの身分証が必要になった。これまでは国民健康保険+期限切れのパスポートでなんとか許してもらった。パスポートは二十歳のときに作ったもので「今度の更新するときは新しいものを持ってきてくださいね」と不動産屋の人にやんわりたしなめられてしまった。
今のところ海外に行く予定もないのにパスポートを作るのは億劫だなとおもっていたら、次のような告知を見つけた。
「免許証をもっていなくて、身分証明に困ったことはありませんか?
そんな方に、○○区では『○○区民証』を発行しています」
〈申請に必要なもの〉
○印鑑
○印鑑と顔写真二枚(たて4・5×よこ3・5)
○本人確認資料
(運転免許証、健康保険証、年金手帳等公的機関が発行したもの)
手数料は三〇〇円。
というわけで、本の話をしよう。
わたしはビル・ブライソンのファンである。アメリカ生まれで長くイギリスに滞在していたコラムニストで、中でもいちばん再読するのが『ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー』(高橋佳奈子訳・朝日文庫)だ。
あるとき著者は、空港で飛行機に乗るさい、写真入りの身分証の提示をもとめられた。
焦って財布のなかをさぐる。
《身分証ならありとあらゆるものがあった。図書館のカード、クレジットカード、社会保障証、健康保険証、それに航空券。どれも私の名前は書いてあったが、写真はついていなかった》
困ったあげく、持ち物をぜんぶひっくり返してみると、自分の写真が印刷された本が出てきた。しかしチェックイン係は「これは許容される本人確認の撮影物のリストには載ってませんね」と却下されてしまう。
《まさかバッファロー行きのフライトにこっそり乗り込むために私がこの本を特別に印刷したとでも?》(規則一 すべての規則に従うこと)
その後、どうなったかは読んでのお楽しみ。
*
写真入りの身分証がないとほんとうに困る。レンタルビデオ屋の会員になれず、本やCDを売るときも断られることもある。原付免許をとるかどうか本気で悩んだこともあった。
たぶん杉並区以外でも同種のカードは発行されているとおもうので、同じ悩みを抱えている人は区役所、市役所で確認してみてはどうでしょうか。
(追記)
マイナンバー導入により、現在、杉並区民証は発行していない。