2015/06/08

仙台と会津

 ひさしぶりに旅行した。仙台と会津若松。仙台はBook! BooK! Sendai——わたしの仙台通いがはじまったのが二〇〇八年の夏だった。book cafe 火星の庭で「文壇高円寺古書部」という古本コーナーをつくったもらったのもそのころである。
 あいかわらず、六月の仙台は心地いい。六日の昼すぎに着いたのだが、ちょっと寒いくらいだった。

 火星の庭の前野久美子さんに「仙台で文学を売りたい」といわれて、自分に何ができるかと考えた。「文学が売れない、どうしよう」ではなく、「売りたい」という言葉が前野さんらしいというか、本にかかわっている人間は、そうあるべきだとおもった。
 そのときに考えたのは、文学の世界の「入り口」になるような本を読んでほしい、知ってほしいということだった。本は一冊読んで終わりではなく、一冊の本が百冊、千冊につながっていく。
 そういえば、火星の庭でトークショーをしたときも、吉行淳之介と鮎川信夫の話をした。ひとりの詩人や作家を読んで、その同時代の人たちを追いかける。その人たちが影響を受けた前の世代の作家がいて、さらに影響を与えた作家がいる。追いかけはじめたら、キリがない。キリのなさが、おもしろい。

 吉行淳之介を読めば、当然、吉行エイスケを知る。エイスケを知れば、仙台にも縁の深い詩人の尾形亀之助にもつながる。昔、仙台の西公園には尾形家があった。亀之助がためこんだ飲み屋のツケを仙台の尾形家に行くと、亀之助のお父さんが、馬に乗って出てきたというエピソードが残っている。
 鮎川信夫を読めば、黒田三郎を読まないわけにはいかず、黒田三郎を読めば、黒田三郎が好きだった宮城出身の菅原克己にたどりつく。

 仙台にちょくちょく通うようになって、東北のことも気になりだした。本を読んでいても、自分が行ったことがある地名が出てくるだけで、近くにかんじる。
 知ってるか知らないかって、ふだんの生活にはたいして役に立たないことでも、それによって自分の関心や好奇心がひろがるということは、大切なことだとおもっている。

 今回のBook! BooK! Sendaiで、前野さんはいったん身を引くみたいなことをいっていたが、大掛かりなイベントではなくてもいいから、仙台とほかの土地の人の行き来する受け皿役は続けてほしい。

 Book! BooK! Sendaiのあとの打ち上げで飲みすぎ(訂正=打ち上げの前に行った焼鳥屋で飲みすぎ)、高橋創一さんの家に泊まる。翌日、広瀬川沿いを散歩する。仙石線が、五月三十日に全線復旧したと聞いて、何の用もないのに乗ってきた。石巻まで行く電車の時間は合わなかったので、高城町駅まで。そこから松島海岸駅まで歩いて、また仙石線に乗って仙台に戻る。

 火星の庭でコーヒーを飲む。店内にジャングルブックスさんもいた。火星の庭で見つけた福田蘭童の『わが釣魚伝』(二見書房)を読みふけっていたら、帰り際、挨拶されたのに気づかなくて、すみませんでした、ジャングルさん。

 夕方、仙台から会津若松へ。こちらも何の用もなかったのだが、今回の旅行は会津鉄道を利用して東京に帰るという目標があった。
 仙台から鈍行で郡山へ。郡山に着いたのは夕方六時前。この時間から会津若松に行って、大丈夫なのか。とりあえず、多少、土地勘のある郡山に泊まって、明日、会津若松に行くことにしようかと一瞬迷ったのだが、ちょうど会津若松行きの電車が来たので、かけあしで乗ってしまう。
 磐越西線の電車の窓からの眺めは、町からだんだん山になる。宿はあるとおもうが、店は営業しているのだろうか。こういうときに、携帯電話をもっていない身としては不安なのだが、こういう不安を味わえるところが、携帯電話をもちたくない理由のひとつである。

 午後七時すぎ、会津若松駅に到着——。駅前のビジネスホテルをおさえ、駅前でメシを食う。店内からはソースかつ丼を会津若松のご当地グルメにしようと画策している気配をかんじたのだが、ふつうのしょうゆラーメンを注文した。とりあえず、夜十一時半くらいまで飲めることもわかった。ホテルで温泉(スーパー銭湯みたいなやつ)の無料券をもらったので、そこに行ったら、旅の疲れがどっと出て、夜十時すぎに寝てしまう。

 会津若松からは、会津鉄道、東武線、JRなどを乗り継げば、東京に帰ってこれることだけはわかっていた。ホテルでもらった会津線の時刻表には、会津若松から新宿駅までほぼ直通の路線(特急スペーシア利用)もあることを知った。夕方五時くらいに東京に帰ることを考えると、特急を利用したほうがよさそう。

 翌日、まず会津若松から会津田島に行く。会津田島駅周辺を二時間くらいぶらぶらする。駅に会津鉄道の記念乗車券のポスターが貼ってあったので、「何の記念ですか?」と聞いたら、駅員さんがいろいろ説明してくれて、買わざるをえない雰囲気になって、「AIZUマウントエクスプレス号の鬼怒川温泉駅乗り入れ10周年記念」の乗車券を買うことに……。
 帰路、印象の残ったのは、会津田島駅から数駅の野岩鉄道の湯西川温泉駅(栃木県日光市)だ。トンネルの中に駅がある。すごく気になる。特急の切符を買ってなければ、途中下車したかった。昔の自分なら、特急券なんか買わなかったはずだから、降りてたとおもう。旅の勘が退化している。

(……つづくかも)