土曜、中野の四季の森公園でイチョウ、モミジを見て、中野ブロードウェイの地下で調味料(ラーメンのスープなど)、ライフでパンと惣菜を買う。
仕事帰り、中野駅で降り、中野セントラルパーク、四季の森公園をよく通る。四季の森公園は春の夜桜もいい。
塩沢由典著『今よりマシな日本社会をどう作れるか 経済学者の視野から』の「成功の罠」——日本のキャッチアップ期とトップランナー期について、本の内容から脱線するかもしれないが、続ける。
日本の経済成長がめざましかったころと現在とでは社会状況がまったくちがう。
わたしが生まれたころ(一九六九年)は、まだ一ドル三百六十円の時代で、工場の廃液は川や海に流し放題、煤煙も撒き散らし放題、労働環境も過酷だった。いわば、環境や健康を犠牲にして経済の発展に邁進していたわけだ。
もちろん昔と比べて機械化が進み、生産力は格段に上がっている。でも上がっているのは、日本だけではない。トップランナー期に入ると、ちょっとくらいの技術の向上、改善では他国と差をつけられない。力はついているはずなのにおもうように結果が出ない状況が続いている。これも「成功の罠」といえるだろう。
『今よりマシな日本社会をどう作れるか』では、長引く不況の理由として、今の日本人の消費行動にも触れている。
《たとえば、高度成長期には「三種の神器」と言われた物があった。洗濯機、冷蔵庫、それにテレビ。その後の安定成長期には、車と、カラーテレビと、クーラーを買いたいという、「3C」の時代があった。
もっと長い目で考えれば、「物」ばかりでなく、より良い教育を子どもに与えて、より豊かな生活を送りたい、それが多くの人たちの願いだった》
だから当時の人たちは、よく働いたし、お金もつかった。
今はどうか。一人の人間が飲み食いできる量は限られているし、ものを置くための場所もない。先月、我が家のテレビが壊れてしまったのだけど、今のところ、買い替えすらしていない(しばらく電源を抜いて放置していたら、いつの間にか直っていた)。
昨今の異世界転生のファンタジーでも、勇者や英雄として活躍するのではなく、スローライフ志向というか、波風立てず穏やかに生きたいといった願望を持つ主人公が多い。このあたりは今の感覚を反映しているとおもう。
塩沢さんは今の日本人は高所得者だけでなく、中間階層の人たちの「需要飽和」が近づいているとも分析している。さらに将来の不安ゆえ、遊興費につかえるお金があっても貯金してしまう。
日本にかぎらず、先進国の多くは消費需要が停滞している。
その要因の一つは「時間の制約」。今、働き盛りの人は長時間労働をしているため、ほとんど遊ぶ暇がない。つまり消費の機会がない。
《物であれば時間がなくても買うことができる。しかし、サービスとか、文化というか、そういうものだったらどうでしょうか。(中略)ライブに行くにも、本を読むにも、旅行に行くにも、食事をしてみんなで話をするという楽しみにも、全部時間がかかる。今、お金を一番稼いでいる人たちが、少なくとも週五日間はそういうことができないことになっているわけですね》
世の中が豊かになり、最新の車や家電を手に入れたいという欲から、のんびりしたり遊んだりしたいという欲に変わってきた。たぶん、社会はまだその変化に追いついていない。
(……続く)