電車賃がもったいないから一駅歩く。電車で三分、徒歩十五分。電車に乗れば、時間を節約できるが、歩けば足が鍛えられる。しかし寄り道して、疲れて、喫茶店にはいると、電車賃よりもお金がかかる。
長い人生、どっちが得かわからない。
近所のスーパーなら百五十円の牛乳が、コンビニだと二百円する。もちろんわたしはスーパーで買う。
これもいろいろな考え方があって、スーパーで買うと、レジで並ぶ時間やら、そこまでの往復時間がコンビニよりもかかる。
たとえば、スーパーだとコンビニで買うより二十分くらい余計に時間が必要だとする。
時給九百円の人にとって、二十分は三百円である。二十分かけて五十円安く牛乳を買うと、その分の時給を考えると、マイナス二百五十円という計算になる。なんだかヘンな計算だが、忙しくてすこし休みをとりたい人なら、三百円安く買うよりも、二十分横になっていたいとおもう人がいてもおかしくない。
(……以下、『古本暮らし』晶文社所収)