年末年始は京都ですごした。
行き帰りの電車、立ち寄った喫茶店などで色川武大の『うらおもて人生録』(新潮文庫)を読み返す。この本、年に一回は読みたい。それもたっぷり時間をかけて。
長所と短所はコインのうらおもてのようなもので、短所を直せば、長所が弱まる。忘れてたよ。この数年、自分の短所をあらためることに拘泥していた。その行為は無駄ではなかったとおもいたいが、おもうようにはいかなかった。
丸くなる。角がとれる。円熟、あるいは成熟への道なのかもしれないが、それは凡庸への道でもある。
長距離走者と短距離走者が鍛える筋肉がちがうように、何をするにせよ、あれもこれもというわけにはいかない。
しっかりしなきゃとはおもう。でもそれだけではない。なにかを得れば、なにかを失う。得ることばかり考えると、中途半端になる。ほんとうに単純な原理だ。
就職経験がなく、社会のルールというものがよくわからない。
(……以下、『古本暮らし』晶文社所収)