2016/05/14

これからの本屋

 五月の連休中、荻窪のささま書店、Titleに行った。Titleでは北田博充著『これからの本屋』(書肆汽水域)を買う。ささま書店には、鶴見俊輔の本が大量に並んでいた。棚一列以上はあったかもしれない。そのあと歩いて西荻窪の音羽館に行く。

 この先、本の世界が拡大していく可能性は低い。ただし、すくなくとも小さな商売が成り立つ程度には本が好きな人はいる。とにかく活字に触れていないと生きていけない“病人”もいる。
 個人の新刊書店の一角で古本を売り、個人の古本屋の一角で新刊を売る。『これからの本屋』という言葉から自分が連想したのは新刊と古本の境界がぼんやりしている世界だ。おそらく今後の新刊書店は、膨大な本を売る大型書店と小回りがきいて「一芸」に特化した小さな書店に分かれていくような気がする。

 出版不況はまだまだ続く。たぶん、ずっと下り坂だろう。書店に限った話ではないが、これまで人が行っていた仕事が機械化されていくだろう。小さな店の場合、大きな店と同じやり方をしても通用しない。量やスピードではかなわない。零細自営業、フリーランスもそうだ。個人営業の本屋や喫茶店のある町も減り続けている。
 散歩のついでに本屋に行って、ふらっと喫茶店に入って、買ったばかりの本を読む。
 わたしの読書生活は限られた地域でしかできない贅沢になりつつある。

『これからの本屋』にはTitleの辻山良雄さんのインタビューも収録されている。

 本屋さんをはじめようとおもっている人に物件を探すためのアドバイスを訊かれ、辻山さんはこう答えている。

《できるだけ自分が好きな場所はどこなのか、という自分の気持ちに正直になった方がいいと思います》

 わたしは本屋のある町が好きで、本に囲まれた生活を続けたい。これからも。
 そのためにはどうすれば……ということを考えているのだが、今はまだ答えが見つからない。