2006/10/15

囲碁随筆

 古本屋めぐりの醍醐味のひとつは、なんとていっても「掘りだしもの」を見つけることだろう。
 ほぼ毎日古本屋をのぞいているが、手にとった瞬間、「おお、これは」と感激にふるえるような本にはなかなかお目にかかれない。日ごろの善行が足りないのかもしれない。

 先日、神保町をふらふら歩いていて、いつものようにぶらじるでお茶を飲もうとおもい、その前に三冊五百円の均一コーナーを見ていたら、ひさしぶりに「おお、これは」という本があった。

 榊山潤編『囲碁随筆 碁苦楽』(南北社、昭和三十七年十月)である。
 わたしは碁将棋の随筆には目がない。碁のルールもわからないのに囲碁随筆が好きなのだ。
『碁苦楽』は、榊山潤編『囲碁随筆 碁がたき』(南北社、昭和三十五年十二月)の続編である。『碁がたき』はすでに入手していたが、『碁苦楽』のほうは、はじめて見た。

 執筆者は、徳川夢声、梅崎春生、大岡昇平、江崎誠致、小沼丹、高木彬光、近藤啓太郎、小田嶽夫、尾崎一雄といったそうそうたる顔ぶれである。
 かつての文壇は、囲碁、将棋がとても盛んだった。しかも、碁将棋をめぐって、おとなげないケンカをしていたりして、とてもおもしろい。

(……以下、『古本暮らし』晶文社所収)