昨年、二軍だった選手が、一軍にいる。
レギュラーだった選手がメジャーリーグに渡ったり、ケガをしたりして、選手層が薄くなっている。
一軍半の彼らにとってはチャンスだが、実績のあるレギュラーとちがい、すぐに結果を残さないと次の候補にチャンスが回る。
勝負の世界は厳しい。
プロになるような選手は、素質も力もある。レギュラーになるには、数少ないチャンスに力を発揮しなくてはいけない。実力も、運もいる。
どんなに二軍で結果を出しても、ポジションの数は決まっている。スタメンの選手と変わらないくらいの実力があっても、代打や代走の数回のチャンスだけではなかなか結果を出せない。
逆に、過去の実績があれば、ちょっとくらい不振が続いても、簡単には交代させられない。
チャンスは平等にめぐってくるわけではない。
走攻守三拍子揃った選手であればいいかといえば、そうとも限らない。
チーム事情によっては走攻守それぞれのスペシャリストが必要な場合もある。左投手には滅法強いとか、守備力や足の速さがチーム内で突出しているとか、替えのきかない武器を持った選手のほうが、出番が回ってきやすい。
(……以下、『閑な読書人』晶文社所収)