2012/08/09

『文學界』のエセー

……『文學界』九月号に「『燒酎詩集』のこと」というエッセイ(エセー)で詩人・及川均について書きました。

《チュウのにおいは鼻をつき。
 ぼくら。めでたく。ここにこうしているだけなのだ。

 みたまえ。
 時空は漠たる一個の物体となり。

 みたまえ。
 アルコホルに漬かった臓物どもは歓喜して。

 焼鳥なども食いたがる。
 だいじょうぶ。小銭はまだあるはずだ。

 焼鳥もろとも。
 ここに。こうして。堪えるのだ。》(「焼鳥もろとも」抜粋/『燒酎詩集』日本未来派、一九五五年刊)

 富士正晴編『酒の詩集』(光文社カッパブックス、一九七三年)で、「焼鳥もろとも」という詩を読んで以来、ずっと気になっていたのだけど、及川均がどんな人なのか知らないままだった。
 ぼんやりとしかわからない詩人が、自分の中にいて、何かの拍子にこの詩をおもいだす。

《ぼくら。めでたく。ここにこうしているだけなのだ。》

 そんなふうにおもいながら酒が飲みたい。