2017/11/18

ちいさな本と店

 冬に備えて、体力温存モードに切り替え中。仕事をして、メシを作って、古本を読んで、プロ野球のドラフトや戦力外の情報を追いかけているうちに、あっという間に一日がすぎてゆく。

 南陀楼綾繁さんの『編む人 ちいさな本から生まれたもの』(ビレッジプレス)、『新版 谷根千ちいさなお店散歩』(WAVE出版)が届く。どちらも題名に「ちいさな」という言葉が入っている。
『編む人』は、『雲遊天下』のインタビューをまとめた本。徳島でミニコミ『ハードスタッフ』を発行している小西昌幸さんのインタビューは、雑誌作りの「業」とでもいうべき言葉が溢れている。

《——小西さんの好きになり方というのが、ちょっと見て「これ面白いな」と思う程度じゃなくて、好きになると、とことんですよね。
 小西 一生付き合うべきだというのが信条です。もう二十年以上前にミーハーとかそういうものについて考えたことがあって、たとえばジャニーズに熱中している十代後半とかの女の子たちが、一生彼らを応援するのか。一方で、六十歳になってもジャニーズ追っかけるのはおかしいことなのか、そんなことも思うんです。ようするに一種の熱病のような感じで何かに接して、あとはサバサバして「卒業しました」みたいなことはどうもおかしいのではないかなという気持ちがずっとあって、それでずっとこだわり続けているところがありますね》

『ハードスタッフ』の刊行ペースは、のんびり……というか、十年くらい出ないこともある(十一号から最新十二号は十五年の間隔が空いている)。

《小西 「死ぬまでつくります」と云ってしまった以上は、やらざるを得ないわけですよ。云ったことはやる、と。ただ、休憩時間がとても長い》

 竹熊健太郎さんのインタビューでは、マンガ家の条件として、絵のうまさを含めた技術以外の「十分条件」について次のように語っている。

《竹熊 やっぱり納期に間に合わせること。百点を目指しちゃうのはアマチュアなんですよ。七十点、八十点でも妥協できるかどうか、それがプロとしてマンガでごはんを食べるということですね。逆にいえば、百点を目指したい人はプロになっちゃダメだとぼくは思います》

 もちろん、プロがよくて、アマチュアがよくないという話ではない。マンガにかぎった話ではないが、様々な制約がある中で、最善を尽くすのがプロ。いっぽう、妥協せず、理想を追求できるのがアマチュアの強みだ。

 少部数のミニコミ、同人誌を作り続ける。その目的や志はそれぞれちがう。お金にならない、否、やればやるほど赤字になっても、そこでしかやれないことがある。

『新版 谷根千ちいさなお店散歩』も、古書信天翁、ブックス&カフェBOUSINGOT(ブーザンゴ)、古書ほうろう、タナカホンヤ、ひるねこBOOKS、古書バンゴブックス、弥生坂 緑の本棚など、古本屋さんの話を読んでいると、自分のペースで暮らしたいという意志みたいなものが伝わっている。

 タナカホンヤの田中さんが、お店の定休日にインドレストランでアルバイトしているという話はぐっときた。