坂口安吾の「ゴルフと『悪い仲間』」を読む。
初出は「文学界」一九五四年八月一日発行。群馬県の桐生市にいたころの安吾の日記である。
《十六日
久々の晴天。朝九時にゴルフに出発。女房より、本日ヒルすぎに安岡君来訪の由注意があったが、ヒルすぎにもいろいろある。(中略)
安岡君の一行すでに来着。はからざる次第。早朝に文春記者に叩き起された由である。この一週間ほど前に河出書房のF君が来て、自分は安岡君の悪友で「悪い仲間」その他のモデルだと名乗り、安岡君について一席弁じていった。むやみに人に絶交したがる男だと云っていた。しかし、安岡君の方がだいぶおとなしい感じ。外面如ボサツというのかも知れん。絶交するのはもっぱらF君の方ですとは安岡君の説であった。ボクの青春時代にも今は死んだけれどもF君のような悪い仲間がいて絶交したりされたりしたのを思いだした》
F君は古山高麗雄。二十代のころ、青山にあった事務所で古山さんとはじめてお会いしたときも安吾の話を聞いた。河出書房時代、安吾の担当だった。編集の仕事は好きだった。安吾が語った歴史の話は抜群に面白かった。そんな話をしてくれた。
桐生は安吾が最後に暮らした町だった。晩年の安吾は古墳をまわり、ゴルフをしていた。
すでにわたしは安吾が亡くなった齢(四十八歳)より二歳年上になっている。