今年は五月五日にコタツ布団を押入にしまった。ついでに部屋の掃除もした。
散歩中、なみの湯の大きな鯉のぼりを見る。
高円寺で最初に住んだアパートと二番目に住んだアパートがなみの湯の近所だった。かれこれ三十年くらい前の話だ。当時、高円寺北口のなみの湯と小杉湯のあいだに住んでいたので、交互に通っていた。
なみの湯の鯉のぼりを見た後、阿佐ケ谷まで歩き、古本屋をのぞき、高円寺に戻って近所の店でノンアルコールビールの飲みながら、緊急事態宣言の延長その他について雑談した。
「コロナ中、ゲームが売れたらしいね」
「電子書籍のコミックスの売り上げも伸びたって話を聞いたよ」
それからわたしは仕事と関係なく研究しているライトノベルの話をする。
「乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生した主人公が商売をはじめるんだけど、だいたいお菓子か化粧品を作るんだよ。なんかたまたま領内でカカオの実が採れたりして」
「俺は酒をつくりたいかな。で、飲み屋をやる」
「すでに異世界の飲み屋の漫画はあるよ」
人間の発想というのは空想の世界であっても現実に縛られている。未来だって今の延長線上にある。
そのうち異世界で感染症が流行する漫画も現われるだろう。