火曜日、中央線で東京駅まで出て、京浜東北・根岸線快速でJR大森駅へ。かつて大森界隈には馬込文士村があった。
駅前の八景天祖神社に寄ってからカフェ「昔日の客」に行く。「昔日の客」は古本屋の山王書房店主・関口良雄さんの息子の関口直人さんの店。
関口直人さんはいつお会いしても明るい。
尾崎一雄の四十周忌ということで貴重な署名本、写真、直筆原稿などを展示していた。
尾崎一雄著『新編 閑な老人』(中公文庫)の全集未収録作「狸の説」は関口直人さんに教えてもらった。
《東京大田区の、旧式呼称で新井宿に住む古本屋の関本良三が、大崎五郎未亡人から、今戸焼の狸を貰ったというハガキをよこした》
尾崎一雄は尾崎士郎と共に作っていた『風報』という雑誌が縁で関本良三と知り合う。関本良三は関口良雄、大崎五郎は尾崎士郎がモデルだ。「狸の説」には関本が『古書通信』に発表した「正宗白鳥訪問記」を気にいり、許可を得て『風報』に転載した経緯が記されている。
ちなみに関口良雄著『昔日の客』所収「正宗白鳥先生訪問記」は『風報』(一九五九年十二月)が初出となっている。
私小説や昔の古本屋の話をしているうちに一時間以上経っていた。知らない人名がいろいろ出てきた。
岡田睦が山王書房や尾崎一雄のことを書いた随筆も見せてもらう。
帰りは臼田坂を通り、都営地下鉄の馬込駅まで歩く。大森界隈は古東海道(鎌倉街道)が通っていた。