街道の研究でどのくらいの古典を読めばいいのか。行き当たりばったりに本や雑誌を読み、そのときそのときの関心のある記述を集める。わたしはそういうやり方が好きなのだが、めちゃくちゃ時間がかかるのが難点だ。
先日、島田裕巳著『最強神社と太古神々』(祥伝社新書)の目次を見ていたら「山の神と山神社」という項目があった。中国の山岳信仰は有名だが、日本もそう。山の神をまつる山神社がたくさんある。
さらに数頁先の「富士山に最初に登った人物」では平安時代の漢学者・都良香の『富士山記』が出てきて、菅原孝標の娘の『更級日記』の話になる。『更級日記』には「山の頂のすこし平ぎたるより、煙は立ち上る」と当時の富士山の様子が描かれている。
《これは1020(寛仁4)年、彼女が13歳の時に、父親が役人として赴任していた上総国(千葉県北部、茨城県南西部)から、家族と共に京都に上る途中、東海道での出来事とされています》
河北新報社編集局編『みちのくの宿駅』(淡交新社、一九六三年)所収の川端康成の「宿駅」でも『更級日記』の話があった(六月十三日のブログ参照)。
わりと近い時期に読んだ先月刊行の新書と六十年前の古本の両方に『更級日記』の話が出てきたのはたまたまなのかもしれないが、たぶん読めということなのだろう。