2025/03/10

今日こちらに

 今月三月十二日刊行の梅崎春生著『ウスバカ談義』(ちくま文庫)の解説を担当しました。梅崎春生の解説にもかかわらず、画家の秋野卓美の話をたっぷり書いた。同短編集には表題作をはじめ、秋野卓美がモデルといわれる人物が何作も登場します。

 週末、西部古書会館(均一祭)。初日一冊二百円、二日目百円。
 土曜は『鹿子木孟郎 水彩・素描展』(三重県立美術館、一九八九年)、『川原慶賀展』(西武美術館、一九八七年)、『熊谷守一展』(岐阜県美術館、NHK名古屋放送局=編集、二〇〇四年)、『江戸名所図会の世界展』(北区飛鳥山博物館、二〇〇八年)、『有島兄弟三人展 武郎 生馬 里見弴』(信州新町美術館、一九八八年)など、図録を中心に買う。

 今回の均一祭で『没後50年 鹿子木孟郎展』(三重県立美術館、一九九〇年)もあったのだが、インターネットの「日本の古本屋」で買ったばかり。よくある。
 鹿子木孟郎は初期(十代から二十代はじめ)の水彩、鉛筆、木炭の風景画がすごい。「崖の下の家(津の近郊)」という作品もある。いっぽうヨーロッパに留学して洋画をしっかり学んだ後の絵は「よく見る油絵」といった感じでピンとこなかった。年譜を見ると、自身の画業と同じくらい後進の育成に力を入れていた人のようにおもう。
『鹿子木孟郎 水彩・素描展』は招待のハガキも付いていた(家に帰ってから気づく)。

『川原慶賀展』はフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトの専属絵師だった画家の図録である。展示作品はすべてオランダのライデン国立民族学博物館のコレクションとのこと。街道の研究をしていると次から次へと気になる人物が現れる。

 日曜昼、均一祭二日目。この日も図録を中心に買う。『受贈記念特別展 古地図の世界 南波松太郎氏収集 日本図・道中図・世界図』(神戸市立博物館、一九八三年)、『文藝春秋デラックス 四季の詩情 日本文学百景の旅』(一九七五年)など計十冊。

 南波松太郎は船舶工学の第一人者として知られる古地図収集家。米寿を迎えたことを機に約四千点の古地図資料を博物館に寄贈した。

『文藝春秋デラックス』は五十年前の雑誌とはおもえないくらい状態がよかった。文学百景――三重県は三木露風の「志摩の村」が入っている。

《海浜に出ると茫洋一目に映り、
 漁船が風景の点在の中の中心となり、
 風が見えぬ模様を織り出して、
 落寞たる遠里の方をも美化する》

 三木露風は童謡「赤とんぼ」の詩人として有名だが「志摩の村」は知らなかった。いつごろの作品なのか。三鷹市立図書館に露風の全集があるようなので今度三鷹を散歩したさい、ついでに調べようとおもう。露風は一九二八年から亡くなる一九六四年十二月まで三鷹市牟礼に住んでいた。

 同誌の「特別紀行」(文学再訪)——小川国夫「武蔵野・独歩と私」は武蔵野の街道に着目していて興味深く読んだ。