2025/11/25

幸福な時代

 十一月二十二日(土)、午前中に西部古書会館。『小泉八雲展 ラフカディオ・ハーン 生誕160年 来日120年』(神奈川近代文学館、二〇一〇年)、馬場あき子著『秘宝 三十六歌仙の流転 絵巻切断』(日本放送出版協会、一九八四年)など。他にも小泉八雲展の文学展パンフは何種類かあるが、今のところ未入手。小泉八雲といえば、かつて『日本の面影』というドラマがあった。小泉八雲著『日本の面影』はいろいろな出版社が翻訳し、刊行している。

 今年はイチョウが早い気がする。蓮華寺や馬橋公園のイチョウは葉が黄色くなっていた。大和北公園のイチョウは緑と黄が半々、見頃は十一月末くらいか。
 高円寺徒歩圏内でも樹の大きさや日当たりなどによって、紅葉の進み具合にちがいがある。

 山田風太郎著『コレデオシマイ。 風太郎の横着人生論』(講談社+α文庫、二〇〇二年)の第5章「みんな不平をいうけど、戦後は日本の歴史の中で一番幸福な時代だ。」のところを読む。

《——こういう幸福な時代が長く続くと思いますか。

 うーん、いつまで続くんだろうねえ。結局、日本に軍備を進めさせるのは中国じゃないかと思うんだがねえ。中国が原爆を持つでしょう。日本はそれが不安で不安でしょうがないんです。また中国という国は、露骨に脅すんですよ》

 単行本は一九九六年刊。三十年ちかく前の言葉である。風太郎、七十四歳。

 山田風太郎著『半身棺桶』(徳間文庫、一九九八年、単行本は一九九一年)に「幸福」という随筆がある。

 足を切断した知人、目を焼く手術をした知人が治療を経て、幸せそうな顔をしていたといった話から——。

《敗戦直後、一物もない焦土の中で、ただその夜から電灯をつけられるというその一事だけで、何物にもまさる幸福感にひたったことを思い出した》

 幸福感はつらい状況を切り抜けたときに味わえるものなのかもしれない。いっぽうそこそこ豊かではあるが、じりじりと貧しくなっていく時代は幸福とおもいにくい。