2006/12/06

冬さえなければ

「男の人でも冷え性になるんですね」
 そりゃなるよ。低血圧に低体温。おまけに貧血性。だから冬は苦手である。
 もともと悪い寝起きがさらにひどくなる。起きてから一時間くらい指に力がはいらない。靴下がはけない。
 足の裏が冷えるとすぐ風邪をひいてしまうから、長時間外出できない。
 冷たい風が顔にあたると、泣けてくる。
 コタツにストーブ、加湿器。室温は二十度以上に保つ。そうしないと仕事ができない。冬はいつもより光熱費がかかる。だから働かないといけない。

 アルバイト代が出たので、防寒グッズを買いそろえることにした。シャカシャカしたズボンとゴアテックス製の靴を買った。ズボンは安かったが、靴は一万円くらいした。かなりおもいきった買い物だがこの選択に悔いはない。
 すこしでも寒さを防げるのであれば、安いものだ。
 さっそくはいてみた。重い。このまま山登りができそうだ。重い靴は苦手なのだが、寒いのはもっと苦手なので、ガマンすることにする。
 耳が隠せる帽子、手袋、マフラーも完備している。なぜか帽子をよくなくす。毎年なくす。どこでなくすのかわからない。

 冬を越す。それが目標だ。冬を越せば、なんとかなる。

(……以下、『古本暮らし』晶文社所収)