2007/09/06

台風と風太郎

 台風九号接近。朝六時すぎに外に出ると、ものすごい湿度。コンビニで煙草を買い、店を出たとたん、眼鏡がくもって前が見えなくなる。
 いつもならこれから寝る時間なのだが、今日は早起してしまった。台風、雷の日は生活リズムがおかしくなる。

 山田風太郎読書週間はまだ続いている。といっても、小説ではなく、晩年の聞き書やエッセイばかりなのだが、作家としてどうこうではなく、「あ、これでいいのか」とおもわせてくれるような、とぼけた発言がたくさんあって、読んでいるうちにこんがらがった考えがすっきりしてくるのだ。

 山田風太郎の『いまわの際に言うべき一大事はなし。』(角川春樹事務所)には、パーキンソン症候群にかかって入院中も、ずっと煙草を吸い続け、酒を飲んでいた話が出てくる。

《酒を飲む、タバコをのむのが良くないといわれても、これで七十五まで生きてきたんだから(笑)。七十五にもなれば、いろんな病気が出るのは当り前だと、僕は思っているから》

 髪をとかしたことがない、歯は一週間に一遍しか磨かないとも書いている。

 あとインタビュアーが司馬遼太郎や遠藤周作、丸山真男のことを聞くと、「読んでいない」とか「そういうのに僕は全く縁がないんですよ」とか、どうでもよさそうに答えている。

《しかし、自分でもよくこれで小説家を続けてきたものだと思う。現代作家のものをまったく読まずに……》

 考えてみるまでもなく、何でも知っていて万能である必要なんてまったくないのだ。
 山田風太郎は人間あるいは歴史にたいするゆるぎのない認識のようなものを身につけていて、それですべてをまにあわせているようなところがある。

 中学生時代に、学校で禁止されていた映画を見て、ヨーロッパの文学を多読したという。

《僕はそれを元手にして一生食っているようなもんだ(笑)》

 もちろん、どこまでホントかどうかはわからない。戦中の日記を見ても、山田風太郎の読書量は、半端ではない。芸事やスポーツは十代のころに才能、それからその才能がどこまで伸びるかということが決まってしまうような気がする。せいぜい二十代前半までか。
 といっても、何もしなければ、どんどん鈍ってしまう。知識を増やのではなく、もっと根幹の、思考力とか感覚とかを鍛える方法はないものか。
 なにをすればいいのかわからなくなっている。

 明日は『ぜんぶ余禄』(角川春樹事務所)を読むことにする。