2012/09/10

動けば食える

 金曜日、夕方四時すぎ、神保町を散策する。すずらん通りを歩きはじめたら、東京堂書店の裏あたりから、ものすごい煙が流れてきた。火事だ。本の雑誌社も近い。

 新刊書店で藤子不二雄Ⓐ著『78歳いまだまんが道を…』(中央公論新社)など、原稿料代わりにもらった図書カードで数冊購入する。
 Ⓐ先生とF先生の友情がたまらない。寺田ヒロオの話が出てくると涙腺がゆるむ。

 藤子Fさんは、作風や画風が安定している。
 藤子Ⓐさんは、どんどん変化している。

 Fさんは、ずっと机の前に座って、自分の想像力を駆使して、漫画を描いていた。
 Ⓐさんは、外に出て遊びまくって、そこから得た刺激や知識を漫画にとりいれようとした。
 ふたりは才能の種類がまったくちがう。

 トキワ荘には、自分の素質をそのまま伸ばしていくタイプもいれば、自分の外に目を向け、まだ誰もやっていないことをやろうと考えるタイプもいる。

 大雑把にわけると、Fさんは前者で、Ⓐさんは後者だ。

 土日は、高円寺の西部古書会館の大均一祭。
 初日は二百円、二日目は百円。
 二日間で二十冊くらい買う。かんべむさし著『むさし走査線』(奇想天外社、一九七九年刊)はおもしろそう。コラムやエッセイ、対談を収録したバラエティブック。

 この本の中に「動けば食える」というエッセイがある。
 サラリーマンをやめて、作家(自由業)になるかどうか悩んでいたとき、友人のデザイナーにこんなアドバイスをされる。

《「一人になって、食べていけますかねえ」
 「そりゃ、いけるよ」
 当然だという顔でこたえた。
 「食べなかったら死ぬからな。死にそうになって死にたくなかったら、動くに決まっているからな。動けば、とにかく食えるだろ」》

 それしかないなとおもう。