金曜日、夕方四時すぎ、神保町を散策する。すずらん通りを歩きはじめたら、東京堂書店の裏あたりから、ものすごい煙が流れてきた。火事だ。本の雑誌社も近い。
新刊書店で藤子不二雄Ⓐ著『78歳いまだまんが道を…』(中央公論新社)など、原稿料代わりにもらった図書カードで数冊購入する。
Ⓐ先生とF先生の友情がたまらない。寺田ヒロオの話が出てくると涙腺がゆるむ。
藤子Fさんは、作風や画風が安定している。
藤子Ⓐさんは、どんどん変化している。
Fさんは、ずっと机の前に座って、自分の想像力を駆使して、漫画を描いていた。
Ⓐさんは、外に出て遊びまくって、そこから得た刺激や知識を漫画にとりいれようとした。
ふたりは才能の種類がまったくちがう。
トキワ荘には、自分の素質をそのまま伸ばしていくタイプもいれば、自分の外に目を向け、まだ誰もやっていないことをやろうと考えるタイプもいる。
大雑把にわけると、Fさんは前者で、Ⓐさんは後者だ。
土日は、高円寺の西部古書会館の大均一祭。
初日は二百円、二日目は百円。
二日間で二十冊くらい買う。かんべむさし著『むさし走査線』(奇想天外社、一九七九年刊)はおもしろそう。コラムやエッセイ、対談を収録したバラエティブック。
この本の中に「動けば食える」というエッセイがある。
サラリーマンをやめて、作家(自由業)になるかどうか悩んでいたとき、友人のデザイナーにこんなアドバイスをされる。
《「一人になって、食べていけますかねえ」
「そりゃ、いけるよ」
当然だという顔でこたえた。
「食べなかったら死ぬからな。死にそうになって死にたくなかったら、動くに決まっているからな。動けば、とにかく食えるだろ」》
それしかないなとおもう。