先月末に、京都から扉野良人さん、岡山から藤井豊さんが、高円寺に来て、藤井さんの写真集『僕、馬』(りいぶる・とふん)の見本を見せてもらう。
造本(角背ドイツ装)やレイウアトは扉野さんが手がけている。細かいところまですごく凝っている。
東日本大震災の一ヶ月後、岡山在住の藤井さんは、(たぶん)居ても立ってもいられない気分になって、青森に行き、そこから福島まで海岸線に沿って歩いた。
もしかしたら単なる衝動で東北に行っただけかもしれない。その場所を歩きたかっただけかもしれない。ひたすら歩いて、撮って、暗室にこもる。そうした時間の中で、大震災のことを考えたかったのかもしれない。
風景と藤井さんが自問自答しているような写真だった。
一ヶ月ちかくに渡る旅を終え、帰りに高円寺に寄った。
行きつけの飲み屋で待ち合わせをしていると、髭が伸び、痩せこけ、野人化した藤井さんが現われた。
手には流木の杖を持っていた。
それから二年以上の月日が流れた。写真集にするという話を聞いてから、ずいぶん時間がかかった。
「被災地を徒歩で縦断するより最近までやっていたブロッコリーの収穫のアルバイトのほうがきつかった」
ものすごく実感がこもっていたので、ほんとうにそうだったのだろう。
「徒歩で旅をすると、人間がちょうど疲れるくらいの距離に町が見えてくる。ほんま不思議ですよ」
そんな話もしていた。
旅先ではあちこちで偶然通りかかった人に助けられた。写真集そのものも、扉野さんの力なしには(まちがいなく)できなかった。
藤井さんにはそういう才能がある。人柄や人間の面白味もそうさせるのだとおもうが、とにかく動いた先でいろいろな偶然を引き寄せてしまうのである。
ようやく『僕、馬』が完成。八〇〇部。三八〇〇円(税込)です。
わたしと河田拓也さんが栞を書いています。
詳細は、ぶろぐ・とふん http://d.hatena.ne.jp/tobiranorabbit/ にて。
来月八月三〇日(金)から九月三日(火)まで、目白のブックギャラリーポポタムで「僕、馬 I am a HORSE 展」を開催します。初日のトークショーもあります。
■ブックギャラリーポポタム http://popotame.m78.com/shop/
■〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-15-17
■営業時間:12:00〜19:00 /(金曜日)12:00-20:00
◇トーク
8月30日(金)
「僕、馬の話をしようか」
藤井 豊 - 荻原魚雷 - 扉野良人
場所 ブックギャラリーポポタム
19時15分開場、19時半スタート
(当日は18時から整理券配布)
定員40名 1000円
※詳細は、ぶろぐ・とふん http://d.hatena.ne.jp/tobiranorabbit/ にて。