昨日、広瀬洋一著『西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事』(本の雑誌社)の出版記念会に行ってきた。
音羽館は二〇〇〇年に開店——。
音羽館がオープンしたころ、ちょうどアパートの立退きをせまられて、古本を買うどころではなかったのだが、「いい店ができたなあ、いつかこの店で思う存分、古本が買えるようになりたい」とおもった。
そのころ、電車賃もなくて、高円寺を中心に、中野〜荻窪界隈の古本屋を自転車で巡回していた。西荻まではちょっと遠かった。出版記念会の自己紹介のときに岡崎武志さんから「泣ける話」をふられたが、何も喋れなかった。この話をすればよかった。
『西荻の古本屋さん』を読んで、やっぱり広瀬さんは堅実な人だとおもった。
独立前から勉強して、本を集めて、貯金もしている。店をはじめることのたいへんさが詳細に語られている。
広瀬さんからすれば、当然のことをしただけなのかもしれないけど、わたしのまわりの自営業者は「無鉄砲型」が多いので新鮮だった。
計画を立て、努力し、実現する。楽や近道をしない。
広瀬さんの「日々と仕事」もそうなのだろう。
きれいで落ち着いた店内、中央線沿線の客層の好みを熟慮しながら作られた本の並び……最近は慣れたが、はじめて音羽館を訪れたときは、若い人(わたしも若かった)や女性客が多くて驚いた。
広瀬さんは従来の古本屋のあり方、もしくは常識のようなものも変えたとおもう。
出版記念会では、音羽館のスタッフ、かつて音羽館で働いていた古書コンコ堂さん、ささま書店の野村くんと雑談中、なぜか副業の話を熱弁してしまう。
帰りに西荻では珍しい夜十一時半くらいまで営業している喫茶店に寄る。