週末、街道旅。日光街道その他の街道を歩いてきた。今、筋肉痛だ。
旅行前から、山﨑晃司著『ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ現代クマ学最前線』(フライの雑誌社)を読みはじめる。
入口は狭いが、奥は広い。副題に「クマ学」という言葉が入っているが、学術書というより、ノンフィクションの読み物として堪能した。
街道歩きをはじめる前までは、クマについて、そんなに深く考えたことがなかった。どこらへんに生息しているのかも知らなかった。なんとなく北海道とか東北とかにはいそうだなくらいの認識だった。
甲州街道や青梅街道ですら、クマの出没エリアだと知り、急に身近に感じるようになった。山梨にもクマが出るのかとおもったら東京都にもクマが出る。
《1970年代終わり頃までは、クマ撃ちの漁師は奥山に分け入ってクマを探す必要があったものが、最近は前山と言われる集落の近くでも容易にクマが発見できるという話もよく聞く》
現在、クマの分布はかなり人里に接近し、ちょっとした散歩やハイキングですらクマと遭遇する可能性があるのだ。
本書の「クマと遭ったらどうなるか」は勉強になった。
とにかく背中を向けて逃げてはいけない。クマスプレーも有効とのこと。
ただし、知識としてクマの対処法を知っていても、現実に遭遇すると冷静な行動はできないものらしい。またクマ(ツキノワグマ)は臆病な動物で人を襲うケースもたいてい防衛本能によるものということも知っておいて損はないだろう。クマのほうが人間を避けることも多いのだそうだ。
突然、森の中でクマに出会ったら怖いが、何も知らずに出くわすほうがもっと怖い。
クマの生態以上に、クマの研究者の試行錯誤を綴った部分もおもしろい。「プロ」ですら、クマがどこに出没するのか予想はむずかしい。はじめてGPSが搭載された「衛星首輪」をクマに装着するのに二年かかった――なんて話を読むと、しょっちゅう報われない調べ事をしている身としては勇気づけられる。
専門分野を追求しながら、社会のことも深く考えている著者の姿勢もこの本の魅力だ。