十二月、腰に貼るカイロの日々。木曜日、昼すぎ散歩に出かけたら、西部古書会館で歳末赤札古本市が開催中だった。コンビニのコーヒーを買って帰ろうとおもって家を出たくらいの気楽な散歩だったから、財布の中に二千円ほどしかなく、欲しい本がいっぱいあったが、抑え気味に古書会館を後にした。
井出孫六の『峠 はるかなる語り部』(白水社、一九八四年)は収穫だった。『歴史紀行 峠をあるく』(ちくま文庫、一九八七年)も面白かったが、『峠』はそれ以上によかった。
《北国街道と別れて、中山道は追分の先で西に向うが、その辺りから和田峠にいたる沿道には、小田井、八幡、望月、芦田など随所に旧い宿場のおもかげがとどめられており、わたしの好きな道だ》
井出孫六は信州の佐久盆地の出身である。佐久市は宿場町がたくさんある。子どものころから街道になじんできた。
ほかにも『日本百名峠』(桐原書店、一九八二年)など、七〇年代後半から峠を攻めている。井出孫六は自腹、もしくは何か他の仕事のついでに峠を取材していた。見習わねば。
土曜日、再び古書会館。三月書房の福原麟太郎の随筆集などを買う。福原麟太郎の随筆集は本のあいだにスクラップやハガキ、図書申込書などがはさまっていた(個人情報だだ漏れ)。
萩原恭次郎の『死刑宣告』の復刻本も木曜日に古書会館で見かけていて、残っていたらほしいとおもっていた。残っていたので買った。デザインがすごい。
仕事の合間、板倉梓の『タオの城』(芳文社コミックス)を読んでいたら、ヒロインが「あたしミルクティが飲みたいわ タピオカ入りの」というセリフがあった。二〇一二年の作品なのだ。天才か。