2010/02/10

電子と古本

 あと数年もすれば、電子書籍はかなり身近なものになるだろう。わたしも巻数の多い漫画(さいとう・たかを『ゴルゴ13』や横山光輝『三国志』など)が電子書籍端末で読めるようになったら、すぐにでも導入したい。おそらくわたしは携帯電話(いまだにもっていない)よりも先にアマゾンのキンドルかアップルのiPadを買うような気がする。

 とはいえ、書籍の大半がオンラインで販売されるようになったら新刊書店はどうなるのか。

 ひとつ考えられるのは、幻想文学フェアとか旅行本フェアとか料理本フェアとか、雑誌の特集をつくる感覚で本を売ることのできる書店、書店員は今以上に重宝されるとおもう。

 また電子書籍端末が普及すれば、著者は出版社を通さなくても、著作を流通させることはそれほどむずかしくなくなる。すでにそのためのソフトも開発されたか、開発中だという話もある。

 そうなると出版社が著者に原稿料や印税を払うのではなく、著者が編集者にプロデュース料のような形で報酬をはらうようになるかもしれない。
 もちろん出版社の力やプロデューサーの才能で「売れる本」を世に出すということもあるだろう。

 わたしはインターネット配信で音楽を購入したことがない。レコードもしくはCDのようなモノの形をしていないといやなのである。本もそうである。本やレコードは、買うだけでなく、売る楽しみもある。
 しかしそういう楽しみ方をしているのは、ごく少数のマニアだという自覚もある。
 そもそもマニアは、たくさん売れるものより、絶版本や限定盤のような稀少価値のあるものを好む。
 電子出版が盛んになれば、紙の本はマニア向け商品として流通するかもしれない。ディスプレイで活字を読むことに抵抗感がある人は、少々割高でも紙の本を買うだろう。

 古本屋はどうなるのか。
 客の立場からすれば、この先も古本屋をまわって店の棚から本を探して買いたいとおもっている。しかし古書価が一万円の本が、電子書籍で千円で買えるとすれば……。
 
 漠然とおもっていることをいえば、行きつけの飲み屋で酒を飲むように、行きつけの書店や古本屋で本を買うようになればいいなとおもう。たとえば、店主や店員の人柄がよくて、常連客の憩いの場になるような店作りをする。もしくはガンコ職人の寿司屋のようにひたすら良質なネタ(本)で勝負する。安さあるいは蔵書量で圧倒する。いろいろなイベントをする。

 いずれにせよ、何らかの方向性を打ちだせないとかなり厳しくなるとおもう。それは電子出版以前の問題でもあるし、フリーライターにもいえることである。

(……思索中)