2010/02/26

怪作にして傑作

 旅の疲れのせいか、頭がまわらん。こんなときは漫画を読むにかぎる。
 ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)は、すばらしい作品だった。

 古代ローマの建築家ルシウスが、タイムスリップして日本の銭湯や温泉にタイムスリップする。荒唐無稽としかいいようがない話なのだが、とにかく読まされてしまう。

 SFの要素よりも、ローマと現代日本の文化、そして時代の比較(ズレ)が、ふざけ半分まじめ半分に描かれている。

 ルシウスは、世界に名だたるローマ人としてのプライドをもっているのだが、現代の日本の銭湯にやってきて、「なんという文明度の高さ……!」とカルチャーショックを受ける。
 主人公にとって、富士山の絵もケロリンのおけも巨大な鏡も衣類かご、フルーツ牛乳など、見るものすべてが斬新なのである。
 彼は日本語がわからない。ゆえに、コミュニケーションはとれない。だが、建築家、技術者の目で日本の風呂文化を(ときどき誤解しながらも)どんどん吸収する。
 そして再び古代ローマに戻ると、日本で得た知見をいかして、新しいローマ風呂を次々と考案する。

 堪能、堪能。温泉に行きたくなる。