家にこもって、換気扇を止め、テレビとインターネットを見続けるような生活は健全ではない判断した。
町を歩けば、気が晴れる。
すこしずつ日常に戻りつつある。
昨日、神保町で自動車にはねられた。
信号は青。横断歩道を渡っていたら、右折してきた車(側面)が、背中に当たり、しりもちをついた。
運転していた人は、すぐ車を降り、大丈夫ですか、病院に行きますかと声をかけてきた。
頭を打ったわけでもなく、すり傷もない。ちょっと転んだくらいのかんじだったので、大丈夫です、といってその場を立ち去った。
しかし、とおもう。もうすこし車のスピードが出ていたら、車の側面ではなく正面だったら、どうなったのだろう。
わたしは考え事をしながら歩く癖がある。
この日も心ここにあらず、というかんじで歩いていた。
もしかしたら運転手もそうだったかもしれない。
幸い、ケガも何もなかった。
立ち上がって、そのまま古本屋をまわり、喫茶店でコーヒーを飲み、夜は飲み屋をハシゴした。
《「それにしては、おまえの言うことは平凡であり、常識的だ」という人があるかもしれない。それに対する答えは、こうである。私は、自己の生き方とか趣味とかにおいては偏奇でも破格でもかまわぬが、世の中のことに対しては、できるだけ正しい均衡の感覚をもってのぞみたいと思っているのだ、と》(鮎川信夫「一人のオフィス」あとがき)
鮎川信夫の『一人のオフィス』(思潮社、一九六八年刊)は、もっとも読み返している本だとおもう。ほとんど癖にちかい。
平静でいようと心がけているときは平静ではないように、わたしが「正しい均衡の感覚」を保ちたいとおもうときは、気持が不安定になっている。
自分のことだけを考えていればいい状況であれば、冷静でいられる。でも「今」はそうではない。ほんとうに心配事だらけだ。
適度にうろたえ、ときどき気晴らしをしながら、目の前の仕事に専念しようとおもう。
あと車に気をつけたい。