六月一日午後、仙台から盛岡へ。かつて宮澤賢治作品の版元で今は工芸品や雑貨などを扱う光原社に行く。館内の中庭の可否館でコーヒー。
その後もふらふら散歩。
この日の夕方、すでに万歩計の歩数は三万歩をこえていた。
開運橋ちかくのビジネスホテルに宿を決め、ちょっとだけ横になり、体力回復をはかって、桜山神社へ。
桜山商店街をぐるっとまわる。
どこもかしこも似たような町並になっていく中、わたしがくりかえし訪れる町は、たいていごちゃごちゃした路地がある。路地裏にはいると、秘境に迷いこんだような楽しさがある。一度や二度、行ったくらいでは、何もつかめない。だからまた行きたくなる。
昨年秋、この桜山商店街に、かけだしのフリーライター時代にお世話になった林みかんさんのみかんやというお店ができた。
連絡せずに訪れたら「急に来る奴」といわれる。
本名でもペンネームでもなく、わたしのことを昔のあだ名で呼ぶ人は、今ではみかんさんと学生時代からの友人の小郷永顕くらい。
「小郷はオープンの日に来たよ」
わたしと小郷はみかんさんの家でよくごちそうになった。
みかんさんのまわりには、田舎から出てきたばかりの世間知らずで空回りばかりしていた二人組をおもしろがってくれる面倒見のいい遊び人が集まっていた。
で、フリーライターになったら、こんなふうに朝も夜もなく、遊んでいられるんだ、と勘違いした。
人生の方向性のようなものは、たいてい勘違いで決まるのかもしれない。後は強引に、辻褄や帳尻を合わせるしかない。
それとおもいどおりにいかないことをどれだけ楽しめるか……。
ウィスキーから日本酒に切りかえたところで、フィービー・スノウの曲がかかる。
四月二十六日、五十八歳で亡くなった。
飲みながら、いろいろ昔話を拝聴する。
昔、みかんさんがニコニコ堂の長嶋康郎さんといっしょに活動していた話は初耳だった。
閉店後、同じく桜山商店街のCROSSROADというライブバーに連れていってもらったのだが、飲みすぎて眠くなってしまった。不覚。
盛岡から帰りの帰りの東京行きのやまびこの自由席は半額だった(六月十三日まで)。