無用といっても、多くの人にとって、という意味で、それを必要とする人には有用なものはいくらでもある。
当然、多くの人には有用でも自分には無用なものもある。
はたして自分が有用だとおもうものを共有できる人間はどのくらいいるのか。
世の中をよくしたいという気持がないわけではないのだが、社会が改善されても自分の生活がつまらなければ意味がない。逆に、社会がどんなにぐずぐずでも自分がそこそこ楽しく生きていけるなら、それはそれでわるくない気もする。
ただし、わたしが酒飲んで本読んでふらふらしていられるのも、世の中にとって有用な仕事をしてくれている人々がいるおかげだとおもうので、まあ、なるべく足をひっぱらないようには気をつけたい。
(……以下、『閑な読書人』晶文社所収)