メルトダウンはしていない。放射能はもれていない。チェルノブイリとはちがう。ただちに影響はない。
今回の原発事故の報道はあまりに稚拙すぎるとおもった。すくなくとも四十数年生きてきて、こんなに不信感がつのった報道は記憶にない。
地震、原発事故があって、水道水、食物から放射性物質が検出された。
「まさか生きているうちにこんな時代がくるとは」とおもった人も少なくないはずだ。
この先、生活にかまけて記憶は薄れていくかもしれないけど、わたしは「原発はもうこりごりだ」とおもった。原発に依拠しない生活ができるのであれば、多少の不便はがまんしてもいい。
わたしの感情に根ざした意見は、少数派の極論ではないと考えている。
震災と原発事故がもたらした価値観の変化を読み誤ることは、仕事を続けていく上で、致命傷になりかねない。
「興味がない」「自分の専門ではない」と距離をとるという手もある。でもそうした安全策自体、時代の価値観と合わなくなるかもしれない。
世の中とは無関係に、ひたすら趣味に耽溺する生き方は、それなりに社会が豊かじゃないと成立しない。
その前提はぐらついてきているし、この先、もっと不安定になるだろう。
震災と原発事故は、東京一極集中の負荷がはっきりと露呈したとおもう。
おかしいおかしいとおもいながら、わたしは都市生活の利便性を享受し、この社会を容認してきた。
原発事故のニュースを見ながら、「いつまで東京に住んでいられるのか」ということばかり考えていた。
(……続く)