……平尾誠二著『理不尽に勝つ』(PHP研究所)を読んでいて、「クリティカル・モーメント」という言葉を知った。
ラグビーなどのスポーツで「勝敗を分けるような重要な一瞬」という意味。ものすごく不利な局面を一瞬でひっくり返したり、逆にほんのちょっとしたミスで逆転されたり、勝負の世界にはそんな「クリティカル・モーメント」がある。
平尾誠二によると、「イギリス人は、この瞬間を見極めるのがとてもうまい。というか、どの瞬間、場面がそれなのか感覚的にわかる」らしい。
一瞬の判断、あるいは行動が、勝敗を分ける。それを見極める感覚は、常日頃から一瞬一瞬を大切にしていないと身につかない。
またこの本の中で、日本の選手の「クリティカル・モーメント」の感覚が鈍っているのは、対戦相手のデータを分析し、事前のシュミレーションをしすぎているせいではないかと疑問を投げかけている。
データや情報が大切なことはいうまでもないが、シュミレーションを重視し、監督やコーチの指示に従うだけでなく、ゲームの流れを見極めながら、選手たちは自らの判断でゲームを進めなくてはならない。
でもそういう判断ができない選手が増えている。
《あまりに安全、確実を求め過ぎて、選手がチャレンジする気持ちや冒険心を奪っているのではないかと……》
一瞬の判断(決断)が、一試合の勝敗だけでなく、その後の人生にとっても大きな分かれ道になることもある。
いかにして「クリティカル・モーメント」の見極めるか。
この感覚については、もうすこし考えてみたい。