2012/12/08

空洞

 かれこれ二十年以上、わたしは鮎川信夫著『一人のオフィス 単独者の思想』(思潮社、一九六八年刊)を読み返している。
 まちがいなく家にある本の中で再読回数が多い本である。
 インターネットの古本屋がなかったころ、探しに探してようやく見つけた。
 たまに自分が紹介した本を読んだ人に「いうほどおもしろくなかったよ」みたいなことをいわれる。好みは人それぞれである。わたしは一冊の本と出あうまでの時間も読書の楽しみだとおもっている。
 その人の書いたものを一冊一冊読み続けて、ようやくそのすごさがわかることもある。

(……以下、『閑な読書人』晶文社所収)