2013/06/04

地球の上で

 暮尾淳『詩集 地球の上で』(青娥書房)を読む。地球は「jidama」とルビがふられている。今年二月に出ていたのだが、最近、書店の詩のコーナーから遠ざかっていたせいか、気づかなかった。
 ちどり足のような文章のリズムが心地よい。

《マレンコフが死んだと
 居酒屋で聞いたが
 スターリン時代の
 ソビエトの首相ではなく
 カラオケの世になっても
 新宿の古いバーを回っていた
 それが通称の
 流しのギター弾きで
 本名は誰も知らず
 皺々の分厚い本の歌詞を
 おれは老眼鏡で追いながら
 「錆びたナイフ」だったろうか
 その調子はずれの声に
 ギターを合わせてくれたのは
 三年前ではなかったか》(マレンコフ)

 わたしもマレンコフを知っている。新宿で飲んでいれば、当然知っていてもおかしくない。「さっき飲んでた店にマレンコフが来たよ」とお客さんがいう。すると、しばらくして、ギターを持ったマレンコフが店に入ってくる。そんなことが何度か会った。

(……以下、『閑な読書人』晶文社所収)