2013/08/12

ある仕事とない仕事(五)

 これといった根拠もなく「三十歳くらいまではふらふらしていても大丈夫」とおもっていた。
 フリーランスの仕事を続けていると、定職に就いていない知人が増える。というか、まわりがそういう人たちばかりになる。東京の中央線沿線はフリーランス人口が多いから余計にそうなる。

 何度となく「好きなことをやるのはかまわない。でも趣味としてやればいいんじゃないか」と忠告された。
 会社に就職して毎月給料をもらって、余暇の時間を利用して本を読んだり、文章を書いたりする生活を送る方法もあったにちがいない。
 趣味と仕事がいりまじった生活をいかに持続するかと考えると、どうしても家賃や生活費その他の問題が浮上してくる。

 仕事を作る〈感覚〉についていえば、何が武器になり、何が武器にならないのか——わたしはその見極めがなかなかできなかった。
 本を読むのが好きで、文章を書くのが好きだったが、物書の世界ではそんな人はゴロゴロいる。中途半端な知識や技術は武器にならない。それを中途半端ではないようにするには時間がかかる。

 五年十年とやって結果が出ないということは何か間違っているのだろう。

 依頼された仕事を受けて堅実にこなす。食っていくためにはそういうこともできたほうがいい。でもそれだけだと続かない。数をこなすことが、技術の修練になる時期がすぎると、受け身の仕事ばかりだと手ごたえを感じられなくなる。

 自分の名前で仕事がしたい。
 しかしなかなかそういう仕事には空席がない。

 たとえ自分にできる最高の仕事をしたとしても、商売として成立させるには別の力がいる。
 話が進まない。いまだにどうしたらいいのかなと考えている。

……まだ続くよ。