正月休み中、いくえみ綾の『G線上のあなたとわたし』(現在二巻まで、集英社)を読んだ。
寿退社した当日に婚約破棄されてしまった主人公の小暮也映子(二十五歳)が、バイオリン教室に通う。也映子以外の教え子は、パート主婦の北河幸恵(四十一歳)、大学生の加瀬理人(十九歳)。講師の久住眞於(二十六歳)は、理人の兄の元婚約者である。物語はそんな四人の人間模様(それぞれ悩みを抱えている)を軸に展開していく。
三人の教え子たちは、別にこれから音楽の道で生きていこうというような夢や野心はない。
「先週うまく弾けてたところが今日はもう弾けない」
「あたしたちの発表会なんて誰が失敗しようが怒る人もいないし失うものなんてなんもないし」
素人が素人に毛がはえたレベルに到達するために悪戦苦闘する。そんな素人なりの微妙な不安と迷いが、見事というしかないくらい絶妙に描かれている。
わたしも二十代の半ばごろ、将棋の勉強をはじめた。四十六歳の今、釣りをはじめたいとおもっている。
どんなに低いレベルであっても、わからないことがわかったり、できなかったことができたりするのは楽しい。楽しいけど、同時に空しい気持にもなる。
最初から趣味と割り切り、遊び半分の気持でやっても楽しくないこともわかっている。
ただ、やってみることで見方が変わる。プロもしくはアマチュアの上級者のレベルがどのくらいすごいのか、やっているうちにすこしずつわかってくる。簡単に見えることが、すごくむずかしい。そういう意味では、できないことも貴重な経験になる。
とにかく続きが読みたい。